　アンガーマネジメントとかいうのが一時期流行したと思う。怒りを感じたら六秒間我慢すると落ち着くというやつ。

　あれのストレス版は無いだろうか。

　今月からずっと困っているのだ。全身が真綿で包まれていないと平常心を保てなくなった。少しの刺激で過剰反応が出て大袈裟に傷つく。だから、こう、心が擦り傷程度の負傷をした時に一時的に我慢すれば治るみたいな方法が、今私に求められているのである。

　調べたところ、ストレスマネジメントという言葉はあるようだが、内容はほんの気休めであった。中には「コーピング」という一応それっぽい方法もあるが──これは、継続的に実行してきた経験があるので、効果の程は分かっている。Not For Meだ。

　そんな都合の良い魔法は転がっていないということか。

　だいたいアンガーマネジメントの方も本当かどうか怪しいものだ。私は自身の怒りを感知するのに時間を要するので、六秒なんてとっくに過ぎ去っている。例えば、繰り返し取り上げてすまないが、オバサン店員に失礼なことを言われた時も、家に帰ってからじっくり考え、「まあ皆イライラしてるんだろうな」と思って、その日は何も言わずに寝てしまったくらいである。翌日に偶然きっかけがあって他人に話さなければ、そのまま封印していた可能性すらある。これは無自覚にアンガーマネジメントを実行していたことになるのだろうか？　だとしたら溜め込む一方なので多分心身に良くない。

　そう思うと、ストレスに関してもそういう捉え方を今までしていたのかもしれない。封印されて忘れ去られて蓄積されたストレスが多かったのかも。実際、何がストレス源なのかをちっとも特定できないまま、何年も鬱病と共に過ごしてきた。今、ストレスに敏感になっているのは、必ずしも悪いこととは言えないのかも……。

　……いややっぱり擦り傷を負ったくらいでいちいち騒いではいられない。そんなのは不便すぎる。

　ここは、せいぜい傷を負いにくくなるよう、早くオッサンになるしかない。

　現状、詰みということだ。