宇宙生徒会動乱

みぐだしょ

落ちたヨルガオ

僕のヒロインは空から降ってきた。ふわふわと天使のように舞い降りてきたわけではない。隕石のように落ちてきた。燃え盛る生首がものすごい勢いで宇宙から落ちてきたのだ。どうしてこうなったのだろうか?


人類が地球を出てヘブンにて文明を発展させ、宇宙に出て数万年が経った。ヘブンだの地球だのがどこにあるのか僕は知らない。惑星に都市が一つしか無く、その村みたいな首都を拠点に希少鉱石を暗黒炭鉱で発掘して他の惑星に輸出するだけの田舎惑星が僕の世界のすべてだった。両親や姉のように宇宙に冒険に行くのがこの僕、ダッカーの当面の夢であった。


暗黒炭鉱へ自動機械のスイッチを入れてその様子を見守る仕事をしに行く前に栄養剤をもらうとき不吉な話を聞いた。

「艦隊戦をしてるらしいぜ。ダッカー」

人類は複数の銀河に支配領域を拡大したが、宇宙人に会うことはなかった。かわりに人類同士での縄張り争いを始めたのだ。人類同盟帝国と世界連邦は人類の指導と発展の舵取りの支配権を賭けて争っているらしい。この惑星も何度も支配者が変わっているらしい。らしいというのもそれは宇宙空間での話であって地上での戦闘は禁じられており、こんな辺境では支配者の交代も書類上の話でずっと前から同じ顔の村長がこの惑星ではいちばん偉い。だからまた書類作業があるのかと思ったくらいで別に関係もないのかと思っていた。


だが宇宙から生首が降ってきた。隕石のように降ってきたそれをキャッチしようとは思わなかった。歩いていたら急に轟音がして燃える何かが落ちてきたのだ。それを目で確認して驚いた。そう生首だった。焼かれてはいるけど。ゾッとしたが思わずジッと見てしまった。髪の毛はチリチリになっているが美しい顔立ちで整った鼻、綺麗な唇である。焼けているが綺麗な皮膚。恐怖や驚きよりもそれに触れたいとの好奇心が湧いた。そもそも違和感を覚えるべきだったのだ。なぜ宇宙から降ってきたのか?こんなに形が残っているのか?もう遅かった。生首が目を見開いた!生きている!生首は僕を見ると伸ばした手首に噛みついた!生首が僕の血を吸う!怖気がした。それをもう片方の手で跳ね除ける!生首が振り落とされ地面に激突!

「痛い!」

生首が叫んだ。僕は噛まれた手首を押さえる。不思議と痛くは無い。

「なんだきみは⁉︎」

疑問符ばかり浮かぶ。すっとんきょうな質問をしてしまう。そもそもなんで生きているんだ。もっと驚くことになる。生首の火傷が癒えていく。綺麗な銀色の髪が生えていく。切断された首も少しづつ伸びていく。再生しているのだ。

「なんだきみは⁉︎」

言葉を繰り返す。

「うるさい人類だなあ、喉が再生しなきゃ上手く喋れないだろうが。私は宇宙生徒会の者だ。喜んで私に血を捧げるのだ」


血を捧げる……?宇宙生徒会?混乱する。

「どうした?早く拾え。血をよこすのだ」

綺麗な生首が急かす。僕はそれを見据え、歩いていく。

「そうだ、さあ血をよこ」

生首を拾って放り投げた!

「バケモノ〜!」

「うわあ〜」

生首は可愛い悲鳴をあげて飛んでいった。木に当たって気絶したそれを拾って帰った。今日はもう暗黒炭鉱に行く気にもなれない。仕事をキャンセルして家で寝ることにした。

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