カロカラ族の出迎え
カロカラ族の見張り番達はチョロチョロと山道を登っていくと、無数に開いた洞穴の一つに迷うことなくぴょんと飛び込んでいった。
見張り番達は迷路のような洞窟を突き進み大酋長ハート・マークの控える祭壇の広間になだれ込む。
「何事だね? 見張り番の諸君」
ハート・マークは頭をカラカラと振りながら見張り番達に尋ねた。
「素晴らしいご報告です。素晴らしいご報告です。
「なんと素晴らしい! もてなしの準備を! 全集団に御触れを出し、最高のもてなしをするように!」
ハート・マークはそう叫ぶとマスクの奥に見える小さな双眸をキラキラ輝かせながら、両手を広げて壁の壁画に祈りを捧げるのだった。
そのころネロ達は気味の悪い蛙に手を焼いていた。中腹に差し掛かったあたりから派手な色をした毒蛙が大量に現れ始めたのだ。馬が踏み潰して毒にやられると大変なので、ネロ達はいちいち蛙を吹き飛ばさなければ前に進めなかった。
「いまいましい毒蛙め!」
カインが棒切で蛙をどかしながら悪態をついた。
「文句言う暇があるなら蛙をどけな! この調子じゃ今夜はこの山で野宿になるよ!」
スーが蛙を叩きながら怒鳴り声をあげる。
「しかしこのままでは実際にこの山で野宿じゃ。なんとかせねばならぬ…」
パラケルススが眉間に皺を寄せて唸った。
その時だった。突然岩陰から何人もの小人がひょこりと顔を出した。小人たちは皆一様に気味の悪い手製のマスクをかぶっており、マスクの外縁には様々な形の生き物の骨が飾り付けられていた。
「カロカラ族じゃ!」
パラケルススの声で一行が身構えるとカロカラ族は皆地にひれ伏してマスクに付いた骨の飾りをカラカラカラカラと振り鳴らした。
「ようこそいらっしゃいましたぁー」
一際小さい小人が前に出て甲高い声で叫んだ。
「毒蛙でお困りでしょう! 近年大量発生して皆様大変困っておられます」
小人達は一同ふしゅーふしゅーと息を吐いて同情の意思を表明する。
「ですから我々カロカラ族は安全に山を越えられる抜け道を皆様にお教えしている次第でありますぅー」
小さい小人がまた叫んだ。
一行は顔を見合わせてどうしたものかと考えた。しばらく悩んだ末にパラケルススは呟いた。
「このままではわしらは立ち往生じゃ。この山道で野宿するのは危険じゃ。なるべく避けたい。こやつらが怪しい素振りを見せればすぐさま退散すること」
一同は頷いて、カロカラ族の提案を受け入れることにした。
カロカラ族はネロ達の周りをぴょんぴょん飛び跳ねながらクスクスと笑っていた。時々ネロと目が合うと隣の小人と顔を見合わせて一際可笑しそうにクスクスと笑うのだった。
「気味の悪い連中だぜ」
カインがネロの隣に来て言った。
「この山は邪悪。小人も邪悪デス…」
パウは手をこすり合わせてずっと祈りながら馬を進めていた。
カロカラ族は大きな洞窟の前に一行を連れてきた。洞窟は馬どころか馬車も通れるほど広かった。綺麗に地面は整地されており、壁には等間隔で松明がかけられていた。
「この洞窟を抜ければ、山の向こう側に出られますぅー」
小さい小人が甲高い声で叫んだ。そしてお先にどうぞと一行を促した。
「危険だパラケルスス。野宿の方が不確定要素が少ない」
ハンニバルがパラケルススの肩を掴んで止めた。
「ハンニバル。この山には恐ろしい怪物がおるのじゃ。夜になると山肌を動き回る。なんとか昼のうちに峠を越えたい」
「なんだと? なんで黙ってた?」
ハンニバルが強い口調で言った。
「すまぬ。まさか蛙で立ち往生するなどと思っておらなんだ。普通に登れば半日で峠を越えられるはずじゃった」
気まずい沈黙が一同の間に流れた。しばらくしてネロが口を開いた。
「こうしていても仕方ないよ。行こうハンニバル。皆がいれば小人にやられたりしない」
こうして一同は不穏な同伴者たちと怪しげな洞窟の奥へと進んでいくのだった。
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