前夜1
「今夜はもう一度この森と平原の境で野営する。キリル平原では食料や水の確保が難しいからの。パウとカインは水と食料をもう一度確保してきてくれ。スーは皆の馬具の点検を頼む。ハンニバルはわしと経路の最終確認じゃ。ネロはわしらとここに残れ。教えることがある」
パラケルスス皆に指示を出すとネロを呼び寄せた。
「ネロ。エーテルに続いてもうひとつ大切な力がある。それはアストラルじゃ。」
「アストラル?」
「さよう。アストラルは精神と理解の力じゃ。知性とも言える。例えばこの魔方陣を見てごらん」
パラケルススはパピルスに複雑な魔法陣をサラサラと書いていった。
「これが何を意味するか解るか?」
ネロは首を横に振った。
「うむ。これには大地の力を使役するための呪文と象徴が記されておる。そこにエーテルを注ぎ込むことで魔法を扱うことが出来る」
パラケルススはパピルスの魔法陣に自らのエーテルを注ぎ込んだ。すると魔法陣が光を発して地面から小さな土の人形がむくむくと姿を現した。
「魔法陣は意味を理解できぬ者でもエーテルを注げば魔法が発動する。おぬしに渡したトールキャンディーにも術が組み込まれておる。エーテルを注げば雷の力を使役することができる」
ネロは袋からトールキャンディーを取り出して眺めてみた。目にエーテルを込めて見つめると、碧いガラス玉の中に稲妻が文字を作っているのが見えた。
「そしてこの世の理を正しく学び、アストラル体を形成できるほどに深く理解すると魔法陣がなくとも魔法を扱うことが出来る…!!」
パラケルススは目を閉じ空を撫ぜた。するとそこに青く光る文字列や図形が現れては消え、形成されては崩壊した。
「これがアストラル体じゃ。エーテルと対を成す存在じゃ」
パラケルススは一通り説明するとそばの石に腰掛けた。
「アストラル体を覚えることは難しい。じゃが魔法陣があれば、お主もすでに魔法を扱えるようになった。正直、この森を抜けるまでに、お主がエーテルをここまで扱えるようになるとは思っておらなんだ。お主はエーテルの才に恵まれておる」
パラケルススはそう言ってネロに目配せした。
するとパウとカインが獲物と水を抱えて睨み合いながら帰ってきた。スーも馬具の確認を終えて合流した。
パウとカインは一言も言葉を発さずに獲物を解体しテキパキと燻製にするための準備を整えていく。
二人の息がぴったりなことにネロは驚いた。スーもそう思ったらしくネロと目を見合わせてニヤリと笑うのだった。
「ネロ。今夜で剣の訓練は最後だ。最後の夜は俺と実戦形式で戦う。準備しておけ」
ハンニバルはネロにそれだけ言うと森の中に消えていった。
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