転生してもスライムだった件

刺菜化人/いらないひと

転生してもスライムだった件

 ぷるぷる、ボクはスライムだよ。

 かっこいいドラゴンになりたくて毎日神様にお祈りしてるんだ。


 今日はこの辺で一番高い丘に行くよ。

 あそこならきっと神様もボクの声を聞いてくれるはずさ!


 ボヨン、ボヨン。


 あ、ドラゴンさんが空を飛んでる!

 かっこいいなぁ!

 ボクもあんなふうに『ぐぉー!』って飛んで『がぉー!』って言いたいな!


 よーし!

 神様にお祈りがんばるぞー!


 ボヨンボヨン!


『スライムはいつものように丘の頂上に辿り着いた』


 神様神様―!

 どうかボクをかっこいいドラゴンにしてください!


 ボヨボヨ、ブヨブヨ。

 ボヨン、ボヨン。


 ……ぐにょ。 


『空を飛んでいたドラゴンは、眼下にある丘の頂上で変な動きをしているスライムを見つけた』


「……なんだありゃ? 突然変異か?」 



 ぷるぷる、ボクはスライムだよ。

 かっこいいドラゴンになりたくて毎日神様にお祈りしてるんだ。

 

 今日はこの辺で一番大きな湖に行くよ。

 あそこならきっと神様もボクの声を聞いてくれるはずさ!


 ボヨン、ボヨン。


 あ、ワイバーンさんがいるぞ!

 かっこいいなぁ!

 でも残念、ボクが一番なりたいのはドラゴンなんだ。


 そうだ、ちょっと挨拶しておこう。

 モンスターの世界は礼儀が大事だからね。 

 元気よく行くぞ―!


 ワイバーンさーん! こんにちわー!


 ボヨボヨボヨボヨ。

 ボヨン、ボヨン。


 ……ぐにょ。


 よし、完璧だ。

 我ながら惚れ惚れするあいさつだったよ。

 これならいつドラゴンになっても大丈夫だね!

 

 よーし、今日こそ神様にドラゴンにしてもらうぞー!


 ボヨン、ボヨン。


『ワイバーンは湖の方に向けて跳ねていくスライムの後ろ姿を見送った』


「なんだ今のスライム? すげー謎の動きしてたな。……新種か?」


 ボヨン、ボヨン。


 よーし、湖についたぞ―!


 ……ぐにょ。


『スライムは湖を覗き込んだ。そこにはマシュマロのように純白ボディの丸い生き物が写っていた』


 はぁ、ボクも早くかっこよくなりたいなぁ……。


 ボヨボヨボヨボヨ。


 あ、水竜さんが泳いでるぞ!

 かっこいいなぁ!


 そうだ、あいさつしなきゃ。

 お祈りで湖を使わせて貰うんだもんな。

 無断で使ったら怒られちゃうよ。


 水竜さーん! 湖使わせてくださーい!


 ボヨボヨボヨボヨ。

 ボヨン、ボヨン。


 ……ぐにょ。


 よし!

 それじゃあ早速お祈りしよう!


 神様神様―!

 どうかボクをかっこいいドラゴンにしてください!


 ボヨボヨ、ブヨブヨ。

 ボヨン、ボヨン。


 ……ぐにょ。 


 よし、お祈りも終わったし帰ろう。

 早くドラゴンになれるといいな!


『水竜は帰路についたスライムの後ろ姿を見送った』


「……なんだったんだ、あのスライムは。なにやら奇妙な動きをしていたが……?」



 ぷるぷる、ボクはスライムだよ。

 かっこいいドラゴンになりたくて毎日神様にお祈りしてるんだ。

 

 今日は魔王城に行くよ。

 あそこならきっと神様もボクの声を聞いてくれるはずさ!


 ボヨン、ボヨン。


 おっ! 入り口に門番が立ってるぞ!

 魔王さんのお家だもんな、ちゃんと挨拶しなきゃ!


 こんにちわ!


 ボヨボヨボヨボヨ。

 ボヨン、ボヨン。


 ……ぐにょ。


 よし、行こう。

 お邪魔します!


 ボヨン、ボヨン。


『門番をしていた魔族達は開いていた正門から入っていくスライムを見送った』


「なんだ今のスライム? 意味不明な動きしてたぞ?」


「なんかヤバそうだし、魔王様に任せようぜ? ここを通っていったのは秘密な?」


 ボヨン、ボヨン。


 なかなか立派なお城だな。

 ボクもドラゴンになったらこういうところに住みたいな。


 ボヨンボヨンボヨン。


「……ん?」


『魔王城の最上階のバルコニーから外を見ていた魔王は、当たり前のように横に跳ねてきたスライムを見て反応に困った』


(なんだコイツは……? スライム?)


 ボヨン、ボヨン。


 あ、こんにちわ魔王さん。

 お邪魔してます。


 ボヨボヨボヨボヨ。

 ボヨン、ボヨン。


 ……ぐにょ。


「……え?」


『魔王は目の前で理解不能な動作を始めたスライムを見て戸惑った』


(え? ホントに何コイツ? この動きは何なの? どういう意味があるの? なんでここにいるの?)


 ボヨン、ボヨン。


 よーし、ボクも

 それじゃあ早速お祈りしよう!

 なにせ魔王城だからな、ここなら注目度は抜群さ!


 神様神様―!

 どうかボクをかっこいいドラゴンにしてください!

 

 ボヨボヨ、ブヨブヨ。

 ボヨン、ボヨン。


 ……ぐにょ。 


 ひゅーん。


 どどどどどど!


 ……ん?


『スライムが祈った直後、空から隕石が振ってきた』


「む! 神め! 魔王城ごと私を消滅させる気か!」


 うわー、いったいなんだー!

 

 どーん!


 スライムは魔王たちと一緒に隕石で消滅した。



 ぷるぷる、ボクはスライムだよ。

 かっこいいドラゴンになりたくて毎日神様にお祈りしてるんだ。


 ここは……。

 どこだろう?


 ボヨボヨ。


「おーおー。お前さんスライムか」


 ん? おじいさんだーれ?


「わしゃあ、この世界の神様じゃよ」


 え!? 神様!

 おじいさんは神様なの?! 


「魔王と魔族だけを殺すつもりじゃったんじゃが、どうやら巻き込まれてしまったようじゃのう」


 ボヨン、ボヨン。


 ……?


『スライムは神の言っていることがよくわからなかった』


「あまり介入すると他の神に怒られるし、どれ、お前さんは転生させてやろう。何か希望はあるか?」


 ――!


 もしかして願い事が叶うの?!

 やった!


 ボクねボクね、かっこいいドラゴンになりたいんだ!

 角があってー、翼があってー、『ぐぉー』で『がぉー』っていうんだ!


「そうかそうか。よしよし、じゃあそれで転生させてやろう」


 本当? 

 やったー! わーい!


 ぐにょんぐにょんぐにょん、ひゅーん!


『スライムの魂は地上へと戻っていった』


 ★


 ぷるぷる、ボクはスライム……、じゃなくなったんだった。

 

 どれどれ、かっこいいドラゴンになれたかな?

 ファイアドラゴン? それともウインドドラゴンかな?


 ボヨン、ボヨン。


 ……ん?


『二匹のスライムが近くからこちらを見下ろしていた』


 ボクより大きいスライムだ。

 ドラゴンになったボクより大きいなんてすごいな。

 きっとキングスライムとクイーンスライムだね。


 こんにちわ!


 ボヨボヨボヨボヨ。

 ボヨン、ボヨン。


 ……ぐにょ。


『二匹のスライムは戸惑ったように互いの顔?を見合わせた』


 ボクはどんなドラゴンになったんだろう?

 あ、あそこに水たまりがあるぞ!

 あれで確認してみよう!


 ボヨン、ボヨン。


 ……ぐにょ。


『スライムは水たまりを覗き込んだ』


『そこには小さな角と羽が生えた、純白マシュマロボディのスライムが写っていた』


 ……あれ?


 ボヨボヨボヨボヨ、ボヨ?


 これ、もしかしてボク?


 ボヨンボヨンボヨンボヨン。


『試しに跳ねてみると、水たまりに写ったスライムも同じように跳ねた』


『おめでとう! スライムはドラゴンスライムに転生した!』


 えー、そんなぁー。


 ボヨン、ボヨン。


『後ろから先程の二匹のスライムが追いかけてきた』


 ボヨボヨ……。


 ……もしかして、ボクの新しいお父さんとお母さん?


 ボヨンボヨン。


『二匹のスライムはその場で跳ねて肯定の意を示した』


 ボヨボヨ……。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……ぐにょ。


『スライムは再び水たまりを覗き込むと、落ち込んだように潰れた』


 ボク、ずっとスライムなのかなぁ?

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