第17話 塔の上の女王の監獄

ようやく箱から出された…………

 

「ここは……」


 そこは監獄のようだった。高い天井近くに小さな窓が一つ、そして通路の方には鉄格子がはめられている……


 (女王と祀っておきながら、扱いは罪人のようね……)


 しかし、机やベッド、ドレッサー、タンスなどは、かなりの高級品だとひと目でわかる代物である。


 この―――塔のてっぺんの一角にある、いろいろチグハグな部屋…………それがエリシアに与えられた新しい新居牢屋だった。



 最初に話をした首謀者らしき三人組は、ほとんど顔を出さず、エリシアは基本放置されていた。


 

 一日2食、少年がエリシアの食事を運びに来るだけである。


 エリシアはその小さな男の子を懐柔して逃げようと考えた。


「毎回運んできてくれてありがとう!

 私はエリシアよ。あなたの名前は?」


「………………」


「ここで働いているの?」


「………………」


「私と遊ばない? 見て見て! この部屋、おもちゃがたくさんあるのよ!」


「……………………」


 その子は、そうしつけられているのか、徹底的に話さない。


 (手強いわ………………)


 子供懐柔作戦失敗。


 それから数日、この部屋で過ごして気が付いたことといえば、この部屋は、昔誰かが暮らしていた形跡があること。


 それも少し幼い女の子なのだろう。


 タンスの中には、エリシアには少し小さいドレスが数着入っていたし、机にも、端っこに、読めないけれども小さな落書きのあとが残っている。ベッドも、少し小さめのサイズだ。


 (その女の子も、ここに閉じ込められていたのだろうか……)


 そう思うと、少しこの部屋に親近感が湧いた。

 思ったほど、過ごしにくくない。


 窓は小さいけど…………ん?窓!


 エリシアはタンスを動かして、窓に余裕で手が届くくらいまでになったが…………


「小さい!?」


 窓は思ったよりかなり小さく、通れそうになかった。

 5、6歳の子供でなければ通れない狭さだ。


 おまけに、窓の外、眼下には断崖絶壁の崖が待ち構えている。


 (無理だわ……たとえ窓から出られたとしても、飛行魔法でも使えなければ、崖から転落死するのがオチね……)


 ちょうど、塔の階段を登る足音も聞こえてきたので、早々とタンスから降りて、元に戻す。


 今回、通路側の鉄格子を挟んで立っていたのは、首謀者の男、三人組の一人だ。


「エリシア女王……反乱の第一歩として、あなた様の民に反乱前の演説を頼みたい。」



「演説…………?

 い、嫌よ。断るわ……私がいつあなた達の反乱に協力するなんて言ったのかしら?」

 「それに…………王族に歯向かうなんて、命知らずだと思わないの?

 あなた達自身やその家族の命さえ危うくなるのよ。

 本当にわかっているの?」


「…………本当に何もわかっていないのは女王貴方だ」


「だから、人違いだって」


「いや、貴方だ。本当に何も覚えておられないのか?」


「覚えるも何も…………」


「どうして、忘れられる?

  なぜ、我々のことを覚えていない……。

  なぜ、そうも平気でいられるのか!!?公女!!」



「………………本当に何も知らないのよ……ごめんなさい……」


攫われている身であるはずなのに、男の剣幕に押されて、謝ってしまった…………。



「…………とりあえず、貴方様には演説をしてもらう……貴方様がしたくなくても結構だ…………魔法で無理やり話させる。絶対にだ。」


  この男は多分、私が魔法を使えない出来損ないであることを多分知っている。

 知っているから、その魔法に抵抗できないこともわかっているのだろう。



 王族が勝てば、反乱を煽る演説をしていた反乱軍のの私は王族反逆罪で処刑。

 反乱軍が勝っても、用済みになった私は殺されるだろう。


 どちらにしても未来はない。




 お兄様とお姉様はきっと今頃必死でエリシアを探してくれているのだろう…………だが、王族でもなく、侯爵の地位もまだ引き継いでいない二人には、できることはわずかに限られている。



 助けはあまり期待できないだろう。



 だから、自分で抜け出すしかないんだ。


 そうやって、ベッドの布団の中に全身でくるまって考えていた。


 


 そう言っても、真っ暗な布団の中、少し息苦しいながらも、

   『誰か助けて』と心で叫んだ。


          …………寂しいから。





―――――――――――――――――――――――

テオドール、次回出てきます。







 

 

 

 


 

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