第13話 (回想2)恋とはなんですか?
「……それで、王妃様とユーリア王女殿下が、今度の孤児院訪問の際に、その焼き菓子を配ってはどうかとおっしゃってて、今日は私もお手伝いさせていただいたんです! いい案だと思わないですか?」
「そうだね」
「このフィナンシェは王妃様が作られたんです! 美味しいですね!」
「そうだね」
「あ、こっちは私が作ったんです。」
「……そうなんだね。」
「…………」
「…………」
(会話が続かない………)
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「テオドール殿下!
今日はなぜいらっしゃらなかったんですか?
去年も来られなかったので、今年は来られると思ってましたのに……」
「すまない。何かあったかな?」
「えっ? あ、いえ、何でもないです。」
(今日は私の15才の誕生日会だと、先週言ったのに……)
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「本日は殿下は、リステアード侯爵令嬢をエスコートできないとのそうです。お気を悪くされないでほしいと、
そう言伝を………」
「ええ、殿下に、忙しいでしょうからお気になさらずとお伝え下さい……」
(何回目だと思ってるの?! 気にするに決まってるでしょ!)
「最近では、テオドール殿下は姿を現してくれることすら、少なくなってきたわ……」
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「お嬢様、王太子殿下は、なかなか来られないですね。」
「……そうね、サターシャ。
きっと雨だから遅れてるのよ。」
「……そうですか。心配ですね。」
(大丈夫。待つのは得意だ。だから大丈夫。)
結局、しばらくしてから伝令を飛ばして、一時間経ってから、テオドールはやって来た。
だが、雨の中待っていたからか、その後一週間、エリシアは寝込んだ。
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エリシアとて、最初は『テオドールに好かれたい、自分だけを好きでいてほしい。』とそんな淡い夢を抱いていた。
王太子妃教育を受けたあと、なぜか毎回いるテオドールと、お茶をしながら話をすることが楽しくて、それだけを支えに、王太子妃教育を頑張っていたと言っても過言ではない時すらあった。
だが次第に年を重ねるごと、自分が別に婚約者だから特別だという訳では無いと気がつき始めていた。
さらには、私と話す時だけ、目が笑っていないことも。
それでも、その時どきのテオドールのとる行動一つ、言動一つで、『やっぱり、自分はテオドールの特別だ』って少し舞い上がったりすることもあった。
結局は、またすぐに我にかえって、現実に落ち込むわけだが……。
これが恋だったのか、どうなのかは知らない。
『こういう感情になると、その感情は恋です』なんて、誰も教えてくれなかったから、あの感情が恋だったのかなんてわからない。
しかも、恋だったとしても、それは過去のことだ。
もうこういうことを7年も続けると、その日のテオドールの行動、言動で自身の感情が浮き沈みすることに疲れてきた。テオドールはあいかわらず、私に興味がなさそうだ。
――――私は、自分に振り向いてくれるわけがないとわかっている相手を一生、思い続けることなんて多分できない。そう悟った。
そんな、報われないことをし続ける勇気もない臆病者だから。
だから、婚約破棄されたのはちょうど良かったのだと思う。
婚約破棄に心が痛まなかったわけじゃない。
ただ、笑ってないとしんどくなりそうだったから、笑った。
笑ってないと誰かに心配をされるだろうから笑った。
だって、ほんとに自分が愛されてなかったっていう現実を、見たくないでしょ?
しかも、片思いだったのかもしれないだなんてね。
だから、私は言う。
多分、私は恋なんてしてない。
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