オホ国再建神話

無常アイ情

オホ国

 オホ声で世の中が回っていくのが、どこかおかしいと昔から思っていた。

 「オオオオホオホンホ。」

 国中の人たちが、オホ声を唱えた。

 オホ声を信仰しているのだ。

 

 「主なるオホ声だけが、あなたがたを救ってくださるでしょう。さあ皆さんご一緒に。」

 オホ声教司祭チンポコは、純粋で潤った子供のような目を見開き涙を流し、満面の笑みを浮かべた。

 

 「オホオホのオッホオホ。」

 

 国中の人たちは、一斉に唱えた。

 

 ジュルルルル

 すると、石油が地面から溢れ出てきた。

 

 「オホ国はオホ声なしでは、先進国に喰われていただろう。飢餓や戦争で人々は苦しんでいただろう。」

 誰もが口をそろえていいます。

 

 「オホ声こそが、唯一至高の神である。」

 内閣総理大臣でさえ、オホ声を信じ、敬い、自らもまた生放送中の全国テレビでオホ声を披露するのです。

 

 「オホ声教開祖マンチン様万歳、さあ、皆様ご一緒に。」

 総理は、全国テレビ生中継とネット生放送の中、両手を上げ下げしていいます。

 

 「オホ声教開祖マンチン様が御作りになられたオホ声経典が、オホ国の経済難、飢饉、他国からの侵略のような数々の国難からオホ国をお救いになりました。ありがたやマンチン!ありがたやマンチン!」

 

 「マンチン万歳マンチン万歳マンチン万歳!。」

 

 総理は気が狂ったようにマンチン万歳を唱え、合掌し涙しました。

 

 ポワワワーン。

 すると、畑の作物が実り、田んぼの稲が、急速に数秒の間に実り、豊作になりました。

 魚が大漁に獲れ、牛や豚、鳥がすくすくと育ち子を残し、肉となりました。

 

 オホ声経典には、オホ声で奇跡を起こすお経の数々が残されている。

 例えば、他国から貿易封鎖包囲網を敷かれ石油の輸入を禁止され囲まれた時に使われた奇跡の文言

 「オホオホのオッホ。」

 石油が湯水のように地面からあふれ出し、資源のないオホ国を救ったとされている。

 

 「オホ。」

 といって火をつけ。

 

 「オホオホ。」

 といって食材を切って料理をする。

 

 「オホヌオホオホ。」

 といって水を出し。

 

 「オホンオホオオ。」

 といって樹を切り。

 

 「オッホオオオン。」

 といって土地を豊饒させふかふかにする。

 

 「オホンヌ。」

 といって建物を建設する。

 

 オホ声で、街をつくりて、やがて国となる。

 オホの国は、かようにして出来たのだ。

 

 「オホオオンンオオオおん!。」

 といって、国が産まれ、オホの神々が産まれた。

 

 経典に書かれていることだ。

 おれは、おかしいと思っていた。

 オホ声で、問題のすべてを解決してしまうことに、危機感を感じていた。

 

 「もし仮にオホ声の奇跡が通用しない出来事に遭遇したらどうなるのだろうか。」

 

 本当は、自らの手足を使って、頭で考えて、問題を解決するべきではないのか。

 

「アヘえアアアアアヘアへへええ。」

 アヘ声だ。

 

 空から、黒く大きな禍々しい手が、埋め尽くすように伸びる。

 数億本はありそうだ。

 

 アヘの国からの、攻撃だろう。

 アヘの国は、長年オホ国を敵対視していた。

 

 ゴオオオオオ!

 

 黒い手は、街の人工物のもろもろを破壊していく。

 

 「大丈夫です。皆様、敵国の新兵器による攻撃でしょうが、主なるオホ声様が、必ずや、あの黒き手を打ち破ってくれるでしょう。さあ、皆さんご一緒に!。」

 総理は、緊迫とした様相で、音頭を取りました。

 

 「オオホオオオンヌホホんオおおおほおおおおほ!。」

 国中の国民が、オホ声経を唱え、国中にオホ声が轟く。

 

 けれど、黒い手の進撃を止めることはできなかった。

 

 「うあああ。なんなんだ。オホ声が通用しないだと。」

 オホ国に住む国民たちは、畏れ慄き、のたうち回った。

 

 バコドカ、ドコバコン―

 

 オホ声によって作り上げてきた街が破壊されていく。

 

 その時、オホ国国民たちは思い出した。

 オホ声ですべてが解決するわけではないのだと。

 オホ声の奇跡がなくなれば、何もない国なのだと、経済大国でも先進国であり続けることでさえ奇跡だったのだということを。


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