EPISODE 3
肌に感じる空気が変わった。傍にバクや星さんはい内容だ。
(ここはどこだろう)
「おお、来たか」
不意に子どもの声がしてその場にしゃがむ。
例え目が見えなくなったとしても、視線を相手と同じ高さに合わせて会話をするのは対背うtだと思っている。
「こんにちは」
気配のする方へ頭を下げると「ほう」と驚いていないような風に驚かれた。
「初対面で跪くとは」
(し跪いたつもりはないんだけど…)
「その黒装束に物騒な鎌、見るからに死神様だな見ない顔だが、見習いか何かなのか」
随分大人びた話し方をする子どもだな、とサミエドロは顔の見えない目の前にいる人物にそんな印象を抱いた。
「はい」
「そうかそうか。じゃあついておいで」
草を踏みしめて先を行こうとするその人物を慌てて引き留める。
「すみません、俺は目が不自由なもので…もう少し歩調を緩めていただけませんか」
振り返る気配と共に「そうか、すまんな気がつかなくて」と言って戻って来てくれたことに安堵する。
「ほて、ここに掴まるがよい」
掴まされたのは恐らく肩だ。随分華奢だし、年端もいかない女の子だろうか。
そのまま低い姿勢で歩みを進める。
「ここはどこなんでしょうか」
「概念が具現化した世界だ」
「となると、地球ではなさそうですね」
その人物はしっくりこないといった腑に何度もアクセントを変えて〝チキュウ〟と繰り返し声に出している。
やっと思い当たったのか「チキュウ…ああ、星のことか」と自分の導き出した結論に納得していた。
「我々の世界は星のような形を持たない。概念だからの」
「概念、ですか」
「お前さんにもわかりやすく説明すると、愛や嫉妬のような感情、あとは実際には存在しないが人々は信じているものなんかが具現化した世界、と言うておこうかの」
「スケールが大きすぎて…すみません、よくわかりません」
「ははっ、そうだろう」
それにしても道が整備されていないようだ。足元はがたがたして歩きにくい。数歩に一回は躓いて、そn旅に前を歩くこの子に支えてもらっている。
この子はきっと目が見えているけれど、見えているから躓かないというよりも、歩いていないような感じだ。まるで浮遊しているかのような身軽さ。
「貴女は?」
「貴女、か。お前さんは我が女だと思っているのか」
なぜ今口にした言葉が「貴女」だとわかったのだろう。「貴方」でも「あなた」でも捉えられるはずなのに。
そんなサミエドロの疑問すらも読み取ったように、その人物は軽快に笑った。
「ははは、すまんの。我は口から発された文字が見えてしまうのだ。心の中で言うた言葉も薄っすら」
「そうでしたか。俺こそすみません、男性だったんですね」
「いやいや、性別なんぞないからどちらだと思ってもらってもよいのだが。何故か他の概念からもそう言われることが多く手の、なぜかと訳を問いたくなったのだ」
サミエドロは少しの間沈黙して、出した答えを口にする。
「愛らしいお声だったので」
「愛らしい、か。ふふ、面白い。ほれ、ここで行き止まりだ少年」
少年?
「はは、わかりやすい奴だ。お前さんなんて我に比べたら赤子も同然だ」
サミエドロの明らかな動揺っぷりすら楽しんでいるようだった。それはまるで大人が子どもをからかうそれと似ている。
「失礼ですが、一体あなたはおいくつなんでしょうか」
「一万年なぞくだらない。軽く数百万年は越えておったかの。忘れた」
「し、失礼しました」
小さな子どもだと勘違いしていた無礼を詫びるように、何度も何度も頭を下げるサミエドロの背中をバシバシと叩く。
「そうぺこぺこ頭を下げていたらこれから会う者たちになめられてしまうぞ。お前さん、神の選抜を死に来たのだろう?」
「はい」
「ならしっかりせい、少年」
先が思いやられるけど、この方は優しいし何とかしてみせよう。
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