1年 第2学期 17週目・18週目

 

 6月11日


「喉痛い……外大雨じゃん」


 寮から学校は徒歩1分の距離信号一つ越えれば学校に着くのだが、この雨だと短距離でも傘はいる。

 臺灣は雨が多くてスコール……突然降ることも多々あるため傘は常備している方が良い、後台湾で傘を買う時日本の傘みたいに骨組みが硬いものはお勧めしない何故なら台湾は台風も多く風が強いので、傘がパキッと折れる可能性が高い――いや実際に強風にあおられてこうパキッとなって慌てたので、臺灣では柔らかい骨組みの傘がひっくり返っても折れないタイプのものを買う方が良いよ。傘は中国語で、雨傘Yǔsǎnって言うよ。


 そんなこんなで学校へ行き寮に戻る途中ふと明日提出の国語のノートを林口に置き忘れていたことを思い出した。


「取りに帰らないと」


 しかしこの雨だもう一度戻ってくるのはしんどいし何なら明日は昼からもう向こうで帰って寝ようと荷物を軽くまとめて林口へと帰った。



 6月12日


 早めに起きてテスト勉強しようと顔を洗っていたら電話が鳴った。夢玲Mèng língからだ。


「どうしたの?」

「今日学校無いから来たらだめだよ」

「どういう事?」

「ニュース見れる?」


 テレビをつけると「左下の天気見て」と言われそちらの表示を見る台湾のニュース番組って左下に各地の天気がずっとぐるぐる回って出てくるのだ。


「そこに停班Tíng bān停課tíngkèって書いてるでしょ?」

「うん」

「台風の日にこの表示が出たら台湾は学校も仕事も休みになる」

「え??そうなの?」

「そうだから今日学校休み!私は寝るね」

「教えてくれてありがとう!」


 電話を切った後、私はやった~って喜んだよね。日本で台風休みなんてめったにない。大阪ならほぼない私の短い人生学校途中下校になったの2回くらいだよそれくらい大阪は寝ている間にすぎているので、台風とほぼ無縁状態。何この台風休みという嬉しい制度はこれ日本にも欲しい!って思った。

 因みに停班Tíng bānは、仕事をするの中国語が上班Shàngbān、それが停止するのだから停班Tíng bān

 授業を受けるが上課Shàngkèだから同じく停止するを足して停課tíngkèとなる。

 またまた携帯が鳴る。今度はマレーシアのお姉さんだった。


「和音ちゃん今どこ?」

「林口だよ~台風で今日学校休み~」

「私たちの今日訪問する会社も私たちと打ち合わせしたら休みなんだって、しかもその場所が林口なんだけど後で会わない?」

「林口今周り何もないからなぁ~私の家の方来てもらってもいい?ここなら地下にお店あるし雨も風も気にしなくていいよ」

「じゃぁ終わったら連絡するね住所教えて~」


 午後からの予定が埋まったので、それまでの時間は勉強に充てることにする。雨音をBGMにしながら一人黙々と机に向かう事数時間、電話の音で現実に引き戻された。


「もうこんな時間だったのか」


 その後お姉さんたちと合流し、下のお店で軽く食べデザートにアイスを買って家でお話して帰っていった。

 台風になると出張で来ている人とかは大変だよね。滞在期間短いしでも仕事しないとだしって本当にお疲れ様です。



 6月13日



 今日は英語の期末テスト。英語だけ早めにしてくれるの有難いよね。勉強あれもこれもってならないで集中できるし、まぁ私は中国語も書けないので両方覚えるのに四苦八苦していますが……

 まずまず頑張った方だろう。うん



 6月14日



 今日は交流会で卒業する先輩方を見送る会なのだが、先輩方が若干叫んでいる。まぁ入学当初の写真出されたら恥ずかしいよね。皆初々しさ残る顔が四年後にはこうなりますみたいな感じで比較されれば叫ぶよね。


 卒業生を送る会なのに卒業生をいじって遊ぶ会になっているのは気のせいだろうか?

 そんなことを思いつつ笑いが止まらない夜だった。



 6月15日



 パソコンの授業正確には、違う科目のはずなのだがほぼパソコン触っている授業宿題が出た。まぁ来週テストだし勉強と並行しながらなんとかできる寮だと思う。自分のパソコンの方がキーボード打ちやすいので若干良かったと思っている。


 6月16日


 土曜日なのだが検定がありそれを受けに来たが、「死んだな」と試験中に思った。例のごとく問題文を解読するのに時間がかかりすぎるからだ。全員受けろと言われたから仕方がないけど、本当ならもっと理解できるようになってから受けたいので、任意の方が良いんだけどなぁ検定ってお金かかるしね。


 帰ってから試験勉強だ。



 6月17日



 眠いが試験勉強しなければ、明日は管理学のテストだ。単位落としそうだがそれでもやらない理由にはならない。終わったら自分にご褒美と言い聞かせ机に向かった。



 6月18日



 結論から言おう。テスト問題意味が分からなかった。教科書にない内容が大半だ。あれ?と首を何度か傾げ、まさかのかなりマイナーなとこ出されたら外国人は終わりだわ~解けるわけがない。


 やけ酒いや、やけ食いならぬドーナツを口に頬張りながら明日の国語の試験勉強で切り替えた。



 6月19日



 試験前から私の悲惨な結果を物語るかのような大雨、泣きたいのは私だ。

 国語は何なら管理学よりかけた気がする。多分ね……



 6月20日



 台風が接近しているのだが、台北にはまだ来ていないので、今日は体育の授業がある。

 台風になると延期になったりするからテストの時は来てほしくない。



 6月21日



 二教科の試験を終え、滅多にないホームルームというか臨時クラス会議、2年1学期のクラス委員

 を決めないといけないからだ。いろんな候補の名前が挙がってる中、私は佳玲Jiā língが「この日本語何?」と聞かれたので、内容を読んでいた時だった。


天野Tiānyě和音Héyīnが良い人~」

「(天野Tiānyě和音Héyīnって誰だっけ?)」


 睡眠不足で頭が回って無かったのとどうやって中国語で説明しようかと考えていたので、反応に遅れた。


「(天野Tiānyě和音Héyīn天野Tiānyěって私じゃん!)」

「へ?」


 時すでに遅しとはこの事だろう。


 副班長の所に私の名前が書かれていた。そのまま視線をスライドさせ班長は誰か確認すると志豪Zhì háoの名前があった。私は色んな意味で落ち込みそのまま机に突っ伏した。隣にいた佳玲Jiā língが同情を込めて頭を撫でてくる。私はふと重大なことが頭によぎる。


「待ってそんなに中国語できない」


 と言ったが「困ったら助けるから大丈夫!」いや何が大丈夫だやりたくないだけじゃん!と私が思ったのも無理ない。副班長点呼取ったりとやること意外と多いんだよ。だから面倒な役職である。


 絶対みんな私が名前覚えてないと思ってるよねこれ?私皆の顔と出席番号一致してるから点呼出来るんだよなぁ~夏休みまでに名前覚えて新学期に逆襲しようと私は内心思いつつ一緒に仕事をする人物が人物なので、嫌な予感しかしない。そしてその予感が当たることを今の私は知らなかった。



 6月22日



 最後のテストはパソコンでやるもので、それが終わり片づけをしつつ電源を落としていると志豪Zhì háoが唐突に企画プレゼンのメンバーを呼んだ。皆「何事?」って顔をしている。志豪Zhì háoは厳しい顔つきで一言。


「どうして僕たちの報告はこんな結果になったのか……みんなどう思う?反省するべきだと思うんだけど」

「(そもそもギリギリまでテーマを変更しまくり、会議には遅刻し、みんなの仕事分担もぐちゃぐちゃ、聞いてもほぼ無視で何も言わない、なんならチームでやるはずがほぼ個人の独断で完結させたからでしょうが~)」


 私は心の中で盛大に突っ込んだ。何なら集まったメンバーの何人かも似たような顔をしている。

 その時、同級生の一人が私の近くを通り過ぎ言った。


「天野お前隈すごいぞ、ちゃんと寝てるか?」


 そう私の目の下の隈、本人がドン引きするぐらい濃いのだ。ここ1ヶ月半まともに寝てないのが主な原因なのだが、私は遠い目をしてその子に言った。


「ここ最近復習やらなんやらであんまり寝れてなかったんだよね~」

「そこまで頑張る必要あるか?」

「私は皆と違って言葉の勉強から入らないと「そんなのただの言い訳じゃない。私そういうの嫌い」」


 私の言葉に被せるようにして言ったのは、夢玲Mèng língだ。彼女の視線は私を見ている。志豪Zhì háoもこちらを睨んでいる。心配して声を掛けてくれた同級生は「え?」って顔をして私を見たが、私は苦笑してごめん気にしないでと目で言った。同級生は「お疲れ」という意味合いで私の肩を軽く屁げますように叩きながらこの場を離れた。私は先ほどの一言で、思ったのはこの反省会という名の名目は、この間の計算間違えの事件も尾を引いているのだろうと思った。企画プレゼンに関して言えば私はほぼ何もしていないと言っていい。何度も聞いたし確認したのに、何もないどころか内容すら教えてもらえなかったからだ。でもそれは私だけでなくメンバーの幾人かは同じだ。夢玲Mèng língはその背景を何一つ知らないまま志豪Zhì háoから聞いた内容を鵜呑みしている。そして志豪Zhì háoは自身が引き起こした問題を責任をほぼ私に転換させようとこの場を設けているのが見て分かる。だって二人とも私のみを見ているからだ。


「(都合のいいコマ)」


 私は、反論も何も言わず二人をいや志豪Zhì háoを真っすぐに見た。私は与えられて事は全力でやっているし、一人だけ楽なんかしていない。私に非があるなら謝るが、現時点で言語を覗いて私に非は無いのだ。


「そもそもあんたがテーマ変えすぎなのよ。後ギリギリにしすぎ」


 声をあげたのは、安麗Ān lìだった。目が呆れた顔をしている。私を見て軽く微笑む「大丈夫分かっている」そう言われて気がした。


 他のメンバーも思う事があったのか口々にあの時こう言ったでしょ?とかあれはどうなったの?って志豪Zhì háoに問いただしている。虚を突かれた顔をしているのは夢玲Mèng língだ。だって知らない事実が次々出てきたらびっくりするよね。


 私は始終黙っていた。もう何か言う気力が失せたからとでもいえる。



 6月23日



 夏休みだー

 教会に行って、今日はのんびりお茶して、帰って掃除して、早めに休んだよ。



 6月24日


 今日は投資プレゼンのあった教科の老師Lǎoshīの家にお呼ばれしています。

 模擬投資の残高上位3チームが老師Lǎoshīの家に招待され、焼き肉をごちそうになった。


 お肉凄く美味しい!

 新しく友達も出来て楽しかったよ!


 この教科は辛い思いでしかなかったが、最後に少し楽しい思い出が加わったので良しとしよう。





 

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