1年 第2学期 7週目

 


 4月2日



 今日も今日とて管理学が終わった後のブーイングが凄まじい。噂によると3年生あたりでもう一度この老師Lǎoshīが担当の教科があるそうだ。だが今のクラスの現状を見ると私たちのクラスと老師Lǎoshīの相性が悪すぎると思う。まだまだ先の話で、しかも単位も取れるのか分からない私が言うのもあれだが、不安しかない。




 4月3日



 午前10時ごろ私は中山駅にいた。夢玲Mèng língと待ち合わせ中である。どこに行くのかというと国語で実は2つ課題があって、1つは物語ぽいもの作成。一つは、博物館とかに行って感想を書く以上。今日の授業は昼からなので、こうやって朝から来ているのである。


 夢玲Mèng língに連れられてきた場所は、台北Táiběi 當代dāngdài藝術館yìshù guǎn【台北当代芸術館】簡単に説明すると――

 日本統治時代に詔安尋常小学校という日本人向けの学校として開設。近藤十郎さんって人が設計したんだってどんどん増築とかされて、1941年に建成国民学校に改称。太平洋戦争が終結後、1946年に台北市政府はこの建築を接収、小学校は廃校して台北市庁舎に転用、1994年に市庁舎を信義区へ移転する時に、この旧庁舎を学校兼文化施設として再利用する計画を立てて、2001年に台北Táiběi 當代dāngdài藝術館yìshù guǎnおよび台北市立建成国民中学と併用されることが決定して今に至る。

 赤レンガ調の建物で中は、2カ所で月ごとに展示物が異なるんだって、そっち方面のセンスがないので素直に「おー」とか「すごいー」とかの感想しか出ないんだけど、仕方がないよね。ある程度感想文の内容を考えたら学校に戻って授業です。




 4月4日



 午前9時――


「やってきました。淡水Dànshuǐ!」


 まだみんな居ないし何なら朝早くて人があまりいないので、テンション高いで私。ちょっと前に来たでしょ?って来たけど前回は前回、今回は今回。授業じゃなければなんでもいいなんてね。


 では、淡水Dànshuǐの紹介をざっくりと紹介するね。台北市内から淡水Dànshuǐへは赤色の路線の「淡水Dànshuǐ行」っに乗ってね。途中手前の駅までしか行かないものもあるから「淡水Dànshuǐ」まで行くか確認してから乗ってね。時間は大体40分程度で気軽に行ける観光名所。

 駅を出てすぐのところに「淡水Dànshuǐ老街Lǎo jiē」があって、グルメにお土産にとこの場所だけでも一日楽しめる。誘惑だらけの美味しそうな香りがずっと漂っているので、少しずつ色んなものを食べるのが良いかもしれない。

 淡水Dànshuǐ河沿いの「環河Huán hé 道路dàolù」まで出ると河に面するようにお店や屋台がいっぱい。対岸にある八里を眺めながら食べ物持って散歩するのも良し!

 食べるだけで一日終わる~確かにそうなんだけど、淡水Dànshuǐはまだまだこれだけじゃない。歴史建築も沢山ある。

 元々はスペイン人が建てて、撤退時に、破壊された跡地にオランダ人が城建設した。「紅毛Hóng máochéng」英国の領事館として使われていた時もあったんだけど、居住場所が少ないとかの問題から隣に新しく建築された「英國Yīngguó領事lǐngshìguǎn」【イギリス領事官】には当時使用していた調度品とかも展示されている。「紅毛Hóng máochéng」付近の坂を上って「真理Zhēnlǐ 大學dàxué」周辺にも歴史建造物が数多く残されている。

 また、スペイン人たちが、淡水Dànshuǐ周辺の防衛を目的に築いた「滬尾Hù wěi炮台pàotái」や日本統治時代に建設された「多田Duōtián榮吉róngjí故居gùjū」、日本の福井県から淡水Dànshuǐの地へと移築された「一滴水Yī dīshuǐ紀念館jìniànguǎn」などちょっとした路地裏にも歴史を感じる建物が沢山あって、他の国の歴史にも触れることが出来る。プチタイムスリップ気分で観光すれば2倍楽しめるよ。あれ?これって私だけかな?


 今日の私たちはまず自転車を借りて――って言っても夢玲Mèng líng他2名自転車に乗れないらしく、丁度6人なので、2人漕ぎの自転車三台借りて、私が夢玲Mèng líng(二人しか女性がいないので)と二人で乗るかなぁって思ってたらまさかの乗れる人と乗れない人でじゃんけん志豪Zhì háo夢玲Mèng líng、私ともう1人、後2人という組み合わせに、しかもなんとだよ。これから行く目的地の道を知っているのが私だけだという――


「え?待って?なんで?」


 この間来たばかりだし道覚えてるけど、みんな知らないの~である。仕方なく異世界人が異世界を現地人に案内するというよく分からない構図が出来上がった。自転車漕ぐのはいいんだけどね。

 途中道中のお店前にすごく大きな黒豚が寝そべってた。ペットかな?とにかく大きかったんだけどそれよりも……


Hēi jiǎo不要bùyàotíng認真騎rènzhēnqí!【ねぇ足止めないでしっかり漕いでよ!】」

「Ha~hǎo輕鬆qīngsōng~【いや~楽だね~】」


 先ほどからこの調子である。知ってる?2人漕ぎの自転車って重いんだよ。それをほぼ一人の足で二人分の体重載せて漕ぐのしんどいんだけど……しかもだよ。


日本Rìběn男生nánshēng和台灣hé táiwān男生nánshēng哪個nǎge比較bǐjiàoshuài?【日本の男と臺灣の男どっちがハンサム?】」


 という質問に対し、私は呆れた顔と口調を隠しもしないで


Dōu一樣yīyàng【どっちも同じ】」


 と答えてやった。みんな同じ血の通った人間だよそれに優劣つけるの変だし、何ならアジア系統は欧米諸国からすれば似た顔立ちだと思われている。それに違いなんてまずないと思うんだけど、みんなこう言った質問好きだよね~


 たどり着いた場所は「漁人Yú rén碼頭mǎtóu」かつて淡水Dànshuǐ第二漁港と呼ばれていて淡水Dànshuǐ河の河口右岸にあるよ。ここには、全長165mの港に架かる流線形の片持ち式斜張橋で、白い帆の印象的なデザインで原木桟道と観光漁市を結んでいる「情人Qíngrénqiáo」がある。情人Qíngrén【恋人】って意味だから日本語にすると恋人橋だね。海に沈む美しい夕日を眺めるのも良し、夜になると、白い橋が、ライトアップされ夜景がきれいでも有名なデートスポット。ここに来たのは国語の課題の為、脚本・監督は夢玲Mèng líng、私は撮影係、後の男子組はって?夢玲Mèng língが腐女子という事を私はこの半年で学んだ。ただの報告じゃ面白くないからって演者は男子諸君。古文でも歌われる短歌って結構恋愛ものが多いでしょ?それ見たくちょっと切ない恋人の逢瀬をここで演出するんだって……周りの観光客からこの子たちなにしてるんだ視線がつらい。男子も遠い目になりながら黙ってポーズ取ってるよ。映画タイタニックで有名なあのシーンとか船の上でもなければ海でもないけど雰囲気は出る。まぁ完全にネタ枠の課題が出来上がりそうだと私は思った。


 その後は、小腹もすいたから近くのお店でいろいろ買って(私は買った傍からもぐもぐしてて苦笑されたけど、出来立てが一番美味しいんだもん。ここ食べ歩きするのは醍醐味じゃんって)食べてたんだけど


天野Tiānyě在日語zài rìyǔ怎麼說zěnmeshuō?【天野の日本語って何て言うの?】」

天野是Tiānyě shì A Ma No和音是héyīn shìKa Zu Ne【天野がA Ma No和音がKa Zu Neって発音だよ】」


 って言ったらそこから


「A Ma No、A Ma No、A Ma~No、阿媽a má【あまの、あまの、あま~の、阿媽a má!】」

不是Bùshì阿媽a má阿媽a máじゃない!】」

阿媽a má阿媽a máだよ】」


 阿媽a máって臺灣語で意味はお祖母ちゃん確かに発音似てるけど、私お祖母ちゃんじゃないから!そこからの志豪Zhì háo夢玲Mèng língが酷かった。阿媽a máってしか呼ばないの他の三人もお手上げ状態だ。

 なんか泣きたくなったよ。夕日は奇麗だったけど……




 4月5日



阿媽a má早安Zǎo ān!【お祖母ちゃんお早う】」

góa不是m̄ sī阿媽a má【私あなたのお祖母ちゃんじゃありません】」


 因みに今のは臺灣語。góaって読みかた書いてるけど実際発音するとWa(ワァ)って音になってる。すごくゆっくり丁寧に臺灣語で違うって返してあげた。クラスの何人かはいきなりのお祖母ちゃん読みに驚いているのと、日本人が臺灣語話したの両方でクラスがざわざわしてる。因みに例のお二人は大爆笑である。

 教会に行ってると年配の人たちは結構臺灣語で会話していることも多く、横で聞いていて簡単な単語なら何とか話せるように練習しているのだ。まさかここで使うとは思わなかったけど、まさかこのセリフ残りの学校生活ほぼずっと言い続ける羽目になるとはこの時思わなかったよね。


 夕方気分が落ち込んでる私だが、同じ学校の交流会メンバーって言っても二人は5年生の方に通ってるからまだ高校生なんだけど、3人で交流会前に夕飯を食べに来た。なんでも期間限定の食べたいものがあるらしい。まぁ時間はまだあるし何なら落ち込んでいる私の癒しの時間としてもらおう。昨日からの事を話すと二人ともうわぁ~って顔になったよ。1度2度ならまだしも今日一日この呼び方だから愛称以前に酷い話である。


 しっかり二人で癒されたよ。



 4月6日



 テストも2週間切ってるので、復習に力を入れつつ報告をまとめる私、気が付けば時計は3時……

 朝一で微積分なので、仮眠だけでもと横になったはいいがあまり眠れなかった。


 因みに珈琲片手に授業行ったよ。眠気覚まし効果あまりなかったけど……



 4月7日



 一日教会だけど午後の集会終わったら今日はお茶をせずに家へと帰った。復習が大量に残ってる。何なら終わりが見えない。いそいそとやってたはいいが眠たすぎて、全然集中できないので、効率が悪いと思い早めの就寝にしようと決めた。布団に入ったのは21時である。



 4月8日



 まだ眠いが体に鞭打ち顔を洗って、昨日の続き、覚える系の内容は、とりあえずまず専門用語を書く練習から漢字がねやっぱり日本と違うから中々覚えられない。何でこんなに画数多いかな。だれも望んでないよ。

 今度はその専門用語の大まかな意味を日本語で頭に入れつつ、自分が中国語で書ける内容に変更する。もしくは、教科書の要点のみをひたすら書いて覚えるの繰り返し。意味が分かっても書けないことが多いからね。

 計算系は、もうひたすら教科書にある問題を唸りながらやったよ。全然出来ない問題もいっぱいあるから困ってるんだけどね。

 会計は……引っ掛けどうやったら理解できるんだろう。この壁が打破できなければ解けない気がする。


 気が付けば時計は18時……


「寮に帰るのしんどいな」


 私は10人のまとめ役である寮長に明日戻る旨を電話で伝えたのであった。

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