1年 第1学期 5週目

 

 日曜日私は、交流会のメンバーで貓空Māo kōngに来ていた。


 私のいる教会では、2~3校くらいの大学に通う教会の子供たちが1つの交流会に所属し、沢山ある交流会をその学校の近くにある教会がまとめている。早い子で高校から親元離れて暮らす子もいるから何かあれば教会にいる大人や交流会にいる大人たち(お兄さんとかお姉さんって呼んでる)に相談したり出来るようになっている。


 日本でいうサークルみたいな感覚かも、臺灣の大学サークルあるの?って聞きたくなるくらい日本みたいに大々的な勧誘とかはしてない。小さな掲示板に貼られていたのを見つけた時は驚いた。

 活発にやっているのはダンスサークルくらいかな。臺北駅の地下の広場とかで踊っている集団をたまに見かけるし……基本勉学優先の臺灣だから、日本でいう部活動もやっている比率が少ないのかもね……


 私の所属している交流会は、私の学校と私の学校から一駅隣にある大学の人たちで構成されているが、私の大学にいる教会の子があまりいないためほぼ向こうの大学の子たちだ。因みに私の大学は商業系の大学、彼らの大学は建築だったり電子工学とか技術専門系の大学、だから男性比率がものすごく高い。今年私を含めて女性が6人、後の十数名は男性である。気まずいかと問われれば気がとても楽である。私どちらかというとキャキャウフフの女性の会話についていけないたちなので……


 何で貓空Māo kōngにいるのか、私たちみたいな新入生たちが週1回の集まりで馴染めるわけもないので、入学して少し落ち着いた今日みんなで野外活動として遊びに来たのだ。天気は快晴、因みに暑い10月なのにまだ半袖だよ。


 もし臺灣に遊びに行くならぜひ貓空Māo kōngへ訪れて欲しい。


 行き方は、捷運Jié yùn(MRT)【地下鉄】文湖線Wénhúxiànに乗って終点「動物園Dòngwùyuánzhàn」【動物園駅】で降りてね。臺北中心部からだと50分くらい。

 少し捷運Jié yùn(MRT)【地下鉄】の話をすると、悠遊卡Yōuyóu kǎ【悠遊カード】がない時、切符を買うんだけど、臺灣の捷運Jié yùn(MRT)【地下鉄】の切符がとてもエコなの!日本みたいに切符売り場で、お金を入れて行先のボタンを押すと出てきたのは青紫色のコイン(見た目は小さい子の玩具にあるプラスチックのコイン)が出てくる。切符の券売機は、中国語・日本語・韓国語が選べるよ!英語はすべてについているから中国語が分からなくても安心!

 そのコインを改札通るときに、ICカードと同じようにかざすと扉が開くの、改札出る時は、コインの投入口があるからそこに入れると出られるのね。この仕組みだと変換されたコインをまた使えばいいからとてもエコだよね。新幹線とかは普通の紙媒体の切符だよ。


 そして捷運Jié yùn(MRT)【地下鉄】や公共バスに乗るときの注意があって、臺灣では駅構内や車内では、飲食や喫煙が禁止されていて、ガムをかんだり水を飲むのも禁止!違反すると罰金だから気を付けてね。改札通る前なら飲んでも大丈夫だけど、中に入ったら手に持つのはOKでも飲まないように注意しよう。

 長距離のバスや列車とか新幹線は飲食OKだけれど、たまに例外があるので、しっかりと案内を書くにしておくことが大切。


動物園Dòngwùyuánzhàn」【動物園駅】って言うくらいなので、ここには臺北Táiběi市立shìlì動物園dòngwùyuánがある。

 この動物園、臺灣固有の動物やジャイアントパンダもいるよ。入園料は大人60元、日本円に直すと180円~240円安い!可愛い動物で癒されたい方は是非~


 貓空Māo kōngなんだけど、「動物園Dòngwùyuánzhàn」【動物園駅】から少し歩いたところに、ロープウェイの乗り場があってそこから貓空Māo kōngに向かうの。キャビンは2種類あって、「一般Yībān車廂chēxiāng」【普通のキャビン】と「水晶Shuǐjīng車廂chēxiāng」【クリスタルキャビン】。この「水晶Shuǐjīng車廂chēxiāng」【クリスタルキャビン】は、床全面透明なんだよ。並ぶ場所が分けられているから高所恐怖症じゃなければ、「水晶Shuǐjīng車廂chēxiāng」【クリスタルキャビン】と書いてある方に並ぶのがお勧め、2分~4分くらいで来るからそこまで待たないかな。


 因みに私たちもみんな仲良くこっちに並びました。待っている間「日本語教えて」って言われたからみんなに自己紹介の仕方を教えてんだけど、「よろしくお願いいたします」が言いにくいみたいで、何回も練習してた。臺灣にない発音とかはやっぱり言いにくいみたい。私は私で中国語を教えてもらった。

 私たちの順番が来たので、「水晶Shuǐjīng車廂chēxiāng」【クリスタルキャビン】に乗り込む。最大5人まで乗れるよ。(人が多い時だと相席になったりする。「一般Yībān車廂chēxiāng」【普通のキャビン】は最大8人)


(おぉ~本当に透明だ)


 動物園駅、動物園内駅、指南宮Zhǐnángōng駅、貓空Māo kōng駅の4つの下車駅があって、行程全長4,033mあるよ。

 私たちが向かうのは、終点の貓空Māo kōng駅だから動物園駅からだと20~30分くらいかな。料金は70元~120元。

 ただ観光客とかも多い時だと切符売り場がとても混雑するから。臺灣に着いたら悠遊卡Yōuyóu kǎ【悠遊カード】をまず購入することをお勧めします。ロープウェイも動物園も悠遊卡Yōuyóu kǎ【悠遊カード】があれば”ピッ”ってするだけで並ばなくていいし、割引があるのでお得!


 ロープウェイって山を越えながら一直線で進むイメージだったんだけど、途中ルートがL字型になっていったりと結構角度があるので、途中下車出来ない駅を2つ通過する。乗っている間は周りの景色を眺めるのもいいし、床を見ると木々や何なら山道歩いている人だって見える。初めの一駅くらいは、高所恐怖症じゃなくてもちょっと怖かった。


 貓空Māo kōng駅に到着すると、眼下に広がる景色がとても奇麗だった。天気が良いのもあって結構遠くまで見渡せる。

 貓空Māo kōngは、鐵觀音Tiěguānyīnchá【鉄観音茶】の生産地で、猫が沢山いるのかと思ったら元々は「穴ぼこの多い場所」という臺灣語が由来らしい音が似ていたってことなのかな?


 鐵觀音Tiěguānyīnchá【鉄観音茶】の生産地ってこともあって、茶葉を使ったアイスや料理などお茶尽くし!

 貓空Māo kōng駅から徒歩20分くらいのところにある「臺北市Táiběi shì鐵觀音tiěguānyīn包種bāozhǒngchá研発yánfā推廣tuīguǎng中心zhōngxīn」臺北市が運営するお茶の展示センターだよ。臺灣各地で栽培されている茶葉の紹介とか鐵觀音Tiěguānyīnchá【鉄観音茶】が出来るまでの製茶作業や機械の紹介がされている。あともう1つ無料でお茶が飲めるサービスがあって、まさしく鐵觀音Tiěguānyīnchá【鉄観音茶】を隅々まで楽しめるってことだね。私はお茶が好きなので終始テンションが高かった。


 時間があれば登山道を散策したり、レストランで食事をしたりするのもいいね。


 私たちは、展示センターを見学して、周りを散策した後、「水晶Shuǐjīng車廂chēxiāng」【クリスタルキャビン】に乗って、動物園で遊んだ。久々に動物園に行ったので、思った以上に楽しめたし、動物で癒された。

 その日の夕方はみんなで、バケットサンドの店で食事をした。メニューの分からないところは、みんなに聞いたよ。迷った挙句私が食べたのは、BBQソース味で濃厚な甘辛だれがとても美味しい。バケット中の具は野菜とか色々入っていたけど、私が嬉しかったのは、ソーセージだ。臺灣のコンビニとか普通の店で売っているホットドッグのソーセージって日本でいうお魚ソーセージみたいな食感なのよね。ここバケットに入っていたのは、あのパリッと食感のソーセージだったのよ。このパリッと感が懐かしい。後で聞いたらこれは德國Déguó香腸xiāngcháng【ドイツソーセージ】って言うんだって、パリッ感が欲しい人はメニューに德國Déguó香腸xiāngcháng【ドイツソーセージ】って書かれているやつを注文するといいよ。店によってない所もあるのでその時は仕方がないとあきらめよう。


 最近勉強尽くしだった私は、その日一日をとても満喫し、また月曜日から日常に戻った。



 水曜日午前の授業は体育。私たちは、地下にある広場にいた。


(こんなところに走るとこあったんだ)


 長細い空間の半分くらいに1週200メートルのトラックがある。

 今日は長距離を測るんだって、因みにこれ1・2年は必須の体力測定らしい。


女生要Nǚshēng跑800pǎo bābǎi公尺gōng chǐ……【女子は800公尺走るぞ】」


公尺gōng chǐって何の単位だっけ?800って言ってるけどmだよね?まさかkm……)


 私は公尺gōng chǐが分からなかったので手を挙げると、老師Lǎoshīがどうした?と聞いてきた。


公尺gōng chǐShìmetre?【公尺ってメートル?】」

Duì所以你要Suǒyǐnǐyào跑800pǎo bābǎimetre【そうだよ。だから君は800m走る】」


 800mマジか!私は驚き


800Bābǎi 而已éryǐ?【800mだけでいいの?】」

Duì800Bābǎi 而已éryǐ!【そう。800mだけだよ】」


 私のこの質問に先生が嬉しそうに答えてくれる。すると周りから「だけじゃなくて800mもあるのよ」と女子メンバーからブーイングが起こり、すると男子が「俺たちなんて1600mだぞ。お前たちの方が少ないという」だけれど私にとっては……


1Yīqiān600liùbǎim而已éryǐ……【1600mだけなの】」


 私の顔があまりにもそんな少ないのって顔しているので、クラスのみんなが何でこいつは少ないと驚くんだという顔になる。すると黙って私たちのやり取りを見ていた老師Lǎoshīが「日本の学校はどれくらい走るの?」と聞いてきたので、私の通ってた学校では、中学校で1500m。高校で3km。冬の体育の1ヶ月間、週3回だから12回くらい走っていたと答えると、クラス全員が「日本ってそんなに走るの」ってドン引きしてたよ。

 臺灣が体育の授業に全然力を入れていないのが、めっちゃ分かったよ。


 その後私のさっきの発言の理由に納得してくれた。そりゃ少なく感じるなと……


 走るときは、男女別の出席番号順で、数人のグループ分けがされたので、私は女子の一番最後のグループ。

 私が走る番になったとき、私が何週走ったかを数えてくれる子に「ラスト2週目とラストの時教えてもらっていい?」と伝えた。その子は不思議そうにしていたが、快く受け入れてくれた。


 走り始めは、何人かが飛ばしたので、後ろから3番目くらい前に5人いたかな。

 私は、自分のペースで淡々と走っていた。因みに何も考えなくていいのでとても楽である。

「天野ラスト2週」って聞こえた時、私の体は自然とスピードアップした。前にいた1人を追い上げ、さらにもう一人に追いつくところで「ラスト1週」が聞こえた。お察し通り私は、ラスト1週走り始めかって突っ込まれるくらいのスピードで走っていた。因みに一番前を走っていた。体育推薦の子たちとほぼ同着。記録は3分47秒まぁまずまずだろう。

 その後数えていた子に問い詰められたけどね。老師Lǎoshīにも聞かれたけど、中学の時にあまりにも遅い時と早い時のインターバルの差がありすぎて、先生に手を抜いてるって思われたことがあって、はじめから先頭を走らされたんだけど結果は変わらず、最後の最後で絶対スピードが上がるタイプで、理由は、最後はさっさと終わらせたいから。それを老師Lǎoshīにも伝えたら笑われた。測定が終わった後も私が楽しそうに体育をしていたので、それがきっかけで、体育の老師Lǎoshīは私の事を下の名前で呼ぶくらい気に入ってくれた。体育ってみんなやる気ないからなおさらである。日本から来た子ではなく私個人を一生徒として認識してもらえたのはとてもうれしかった。


 日本人枠から天野和音を認識してもらうには、みんなの意識改善からだと私は密かに心に決めた。


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