俺の後輩が俺にだけうざ絡みしてくる

えーる

第1話

 高校2年の夏、俺は2度と恋をしないと誓った・・・・・・



 *****



 俺、桐島海人きりしまかいとは自分で言うのもなんだか顔は決して悪くはないと思っている。


 クラスで学級委員をしたり生徒会をしたりといろいろなことに積極的に取り組んだりしていた。



 しかし、俺は、まったくと言っていいほどモテなかった。このままでは、ダメだと思い、俺は、当時好きだった学校内でも美女と名高い花坂愛美はなさかあいみさんに勇気を出して告白することにした。


 俺は、放課後、屋上に愛美さんを呼び出して告白した。俺は、この告白が二つ返事で了承されると思っていた。


 実際、彼女からそんなに悪い反応はなかったように見えた。しかし、彼女は「少し考えてみてもいいかな?」と言って返事を先延ばしにした。


 その時の俺の気持ちと言ったらもう絶望しか感じなかったが、まだかすかに残ってる希望をもって、その場を解散した。


 その後、俺は、ずっと待ち続けたが彼女から返事がくることはなかった。


 なんと彼女は、交通事故にあって亡くなっていたのだ。俺は、自分の告白のせいなんじゃないか?と考えずにはいられなかった。


それからというもの、俺は他の人と接するのが怖くなった。特に恋愛に関しては、考えるだけで具合が悪くなるようになっていた。


 このようなことがあってから俺は、恋なんてしないと考えるようになった。




 *****



 あれから3年がたち俺は、大学2年生になっていた。高校生のころとは打って変わり髪を伸ばして目元を隠し完全完璧に陰の世界の住人となっていた。

 

  高校生の頃、学級委員や生徒会をしていたとは到底思えないほど変わっていた。前は、たくさんいた友達も今では少なくなった。


 そんなことを考えていると不意に背後から声をかけられた。


「せ~ん~ぱ~い、一緒に帰りましょう♪」


 俺は、この声に心当たりがあった。こんなふう絡んでくる奴は、中野唯なかのゆいひとりしかいない。


 中野さんは、中学生の時の後輩だ。高校は違う学校だったが、大学で奇跡的に再会したのだ。


 なぜ中野さんが俺に絡んでくるのかがわからないが、ひとつ確かなことは、周囲の視線が痛いということだ。嫉妬だったり妬みだったりと俺を見る視線にはいろいろあった。


 彼女は、なかなかの美貌を持っていて入学式の時にもかなり話題にあがっていた。たしかに最後に見たときと比べると見違えるほど変わっていてとても魅力的になっていた。


 中野さんと再会してから約半年ぐらいたつが、毎日どこかしらで絡まれて迷惑しているが女性に対して恐怖心んを持っている俺でも不思議とそんなに悪い感じはしなかった。


「中野さん、よくもまあ毎日俺なんかと帰ろうと思うよね。もっと同級生とかと帰ったほうが楽しいんじゃないの?」


 いつも俺なんかと一緒に帰ろうとする彼女のことが実は友達いないんじゃないかと心配になってきた。


「いえいえ、そんなことはないですよ。先輩と帰るの楽しいですよ」

「というか昔みたいに唯って呼んでくれないんですか?前は、いろいろなことをしあう中だったのに・・・」


「いや、そんなことはなかったはずだけど・・・」


 と俺がそれを言うな否や中野さんは、目をうるうるさせながら見てくる。


「ひどい!私とのことは遊びだったなんて」


 さすがにこの茶番にもあきあきしてきたので中野さんのことは放っておいて帰ろうとする。


「ちょ、ちょっとなに無視して帰ろうとしてるんですか。待ってくださいよ」

「というか再会してからずっと思ってたんですけど先輩って中学校の頃と比べて雰囲気ずいぶん変わりましたよね?前は、私に対してもそんんあに他人行事じゃなかったですし。何かあったんですか?」


 不意に中野さんがそんなことを聞いてくる。


「何もないよ」


「ふーん、怪しいですねえ。もしかして失恋でもしましたか?」


 そんなことを言われて俺は、一瞬黙ってしまった。鋭い中野さんなら今ので気づかれてしまっただろう。


「かわいそうな先輩ですね・・・」

「あの、そ、それじゃあ私とかどうですか?」


 !?急に中野さんの雰囲気がおかしくなったかと思いきや変なことを言い出したぞ。


「中野さん、それってどういう意味?」


「うん、もう先輩ったら仕方がないですね。私が先輩と付き合ってあげるという意味です!!」


 その言葉を聞いたとき俺は、胸が何かにキュッと締め付けられるようだった。つきあうという言葉を聞くとあの時のことがよみがえりいつもこのようになってしまうのだ。


 このまま黙っているのも中野さんに悪いと思い、どうにか心を落ち着かせてから返事をした。


「中野さんのその気持ちは、とっても嬉しい・・・けど俺は君とはつきあうことはできない。ごめん・・・・・・」

「それに、俺なんかに君みたいな素敵な女性はもったいないよ」


 自分に好意をよせてくれている女性のことを振るのは、とても心が痛んだ。しかし、それ以上にあの時のことを考えてしまうのだ。


 いつまでも引きずるのはよくないと頭では分かっているのに心がそれについてこない。


 つくづく俺は、ダメな奴だと思う。


 中野さんは、「そっか・・・」と一言いうと黙って去って行ってしまった。


 俺は、振ってから彼女の顔を見ることが出来なかった。怖かったのだ。自分のせいで彼女を傷つけてしまったから。


 それから、彼女は、俺の前に顔を出さなくなった。そのことについて、俺は罪悪感をもっていたが少しのさみしさもあった。

 

 自分から振っておきながらさみしさを感じるなんてとても自分勝手だと思う。


 俺が、その気持ちを強く感じるのは、帰り道あの日彼女を振ったその道を通る時だ。


 俺は、そのたびに「これでよかったんだ・・・」と自分に言い聞かせていた。




*****



 さらに、それから2か月がたった。季節ももう秋になり毎日過ごしやすい日が続いていた。


 俺はいつものように帰ろうとしていると、とつぜん背後から声をかけられた。そのことに俺は懐かしさを覚えた。


 こんなことをするのは、彼女一人しかいないと思いながら振り向くとそこには、最後に会った時とは変わり大人びた中野さんがいた。


 以前の中野さんは言ったら悪いけどどこか子供っぽっさを感じたが、今の彼女は、そんなことはなく、とても引き付けられて彼女から目を離せなかった。


「その様子だとイメチェンは成功みたいですね、先輩」

「あ、ああ。ずいぶん変わったね。前と比べてすごく大人っぽくなったよ。」

「そうですか。なら良かったです。まあ、今日は、そんな話をしに来たのではないのでいいです」

「先輩これから少し話をしましょうよ」


 俺は、このまま彼女のことを突き放すのは失礼だと思い「わかった」と一言いうと、彼女に黙ってついていくことにした。


 そうして連れてこられた場所は、俺が前に愛美さんに告白した場所だった。


 「どうして彼女がここを?」と思ったとき答えは彼女の口から告げられた。


 「先輩は怒るかもしれないけど私、先輩のことが諦めらめ切れず、どうしてつきあってくれないんだろう?と思って先輩のことをよく知るある人に聞きに行きました。そのうえでもう一度言います。先輩私とつきあってくれませんか?」


「俺は・・・・・・」


 俺は、それでもつきあえないという趣旨のことを言おうとすると中野さんは、それをっみこしてたかのように俺の言葉を遮った。


「返事は今は、いいです。いいつまでも待ちますから。先輩がそのことを乗り越えられた返事を下さい」


 そういうと彼女は去って行ってしまった。俺は、1人取り残されてただ立ち尽くしていた。

 


 *****


 

 とりあえず俺は、中野さんに俺の過去を話したであろう人物に連絡を取ろうとしていた。すると、その相手の方から先に連絡が来た。


 内容は、「今週の土曜日に会って話をしないか?」というものだった。俺は、連絡するてまが省けたと思いながら「わかった」と返事した。


 俺の過去について勝手に話したことを問い詰めてやる!という意気込みをもって土曜日になるのを静かに待った。



*****



 土曜日になり俺は、集合場所のファミレスに行った。そこに着くと、すでに今日の話し相手である俺の親友の川原拓斗かわはらたくとがいた。


「おーす!海人久しぶりだな」

「おーす・・・じゃないんだよ!やってくれたな!!」

「まあまあ、そのことについては後でちゃんと話すから落ち着けって!そんなことよりも俺腹が減ったからよ先に飯食べね?」


 俺は、このマイペースな拓斗のことを1回殴ってやろうかと本気で思うのだった。



「ふぅーいやー食った食った」


ご飯を食べ終わり店から出てきたところで俺は、拓斗に問い詰めることがした。


「それじゃあ、そろそろ中野さんに話したことを教えてもらおうかね?」

「そうだなあ、あのことは話しただろう」」

「ああ、告白されたときにいってたからな。問題はお前がその話をどこまでしたかなんだよ」


 俺にとっての重要なことはその話がの全貌を彼女に知られないことだ。


「ああ、悪いすべて話したわ」


 俺は、その言葉を聞いてすごく寒気がした。一番知られたくなかった人に知られたという事実に動揺を隠せなかった。


「・・・なあ、海人お前はいつまであの時のことを引きずるつもりだ?あれは、別にお前のせいじゃなねえってあれは不慮の事故だったんだ」


 ・・・そんなことぐらいは俺だってわかってるよ


「でも、まったく俺のせいじゃないっていう保証もないだろ」

「確かにそうかもしれないけど、お前は、もう十分苦しんだろ。そろそろお前は幸せになってもいいじゃないのか?って俺は思うんだ」


 俺が、拓斗の言葉を聞いてどうするべきかと考え込んでいると、俺のそんな悩みを感じ取ったのか拓斗は、


「まあ、海人俺がさっき言ったことは本心だが、お前がそれでも自分を許せないのなら別に文句は言わねえ。けど、無理して1人で抱え込む必要はないと思うぜ。お前のことを思ってくれている人が身近にいるんだからな。彼女ならお前の背負っているその重荷を一緒に背負ってくれると思うぜ。俺は、海人がどういう選択をしようが助けになってやるからよ」


 と言ってきた。俺は、拓斗のその言葉にとても救われたのと同時に、今のままではダメだと改めて感じた。


 

 


 *****



 それから俺は、まず自分の見た目から変えようと思い、今までずっと伸ばしてきてた髪を切った。


 そして俺は、過去のトラウマを克服するためにも中野さんへの告白は以前もしたあの場所ですることに決めた。


 そうと決めたら早速行動あるのみと思い俺は、彼女に連絡した。


『中野さん、明日の放課後この間あった場所に来てもらってもいい?』

『わかりました』


 俺が、そう連絡するやいなやすぐに返信がきた。



 放課後になり俺は、いよいよ近づいてきた運命の瞬間に胸がどきドキドキしてきた。


 目的地が近くなっていくたびに不安になっていく。また前回と同じようになったらどうしよう?だったり、ほんとに俺なんかでいいのか?だったりと後ろ向きな気持ちがでてくる。


 ダメだな、こんなことばかり考えてじゃ。俺なら大丈夫だ。もし今のままではダメだとしてもこれから段々と成長していけばいい。と自分に言い聞かせた。


 そうこうしているうちに目的地についてしまった。そこに行くとしでに中野さんが待っていた。


「中野さん!ごめん、待たせちゃって。あの時の返事させてもらってもいいかな?」

「はい…」


 さあ、言うんだ俺!好きです付き合ってくださいと。


「中野さん、ぜひ俺と付き合ってください!!」


 俺が、その言葉を言うと中野さんの目が大きく開かれる


「私、ほんとは振られるんじゃないかとずっと不安だったんです」

「そんなことをするはずがない!俺には、君が必要だ。俺は、1人ですぐに抱え込もうとするから中野さんには苦労を掛けるかもしれない。それでも、俺のことを支えてくれると嬉しいんだ」

「もちろん支えますよ。私は先輩のためならなんだってできるんですから」


 そういう彼女は、輝いてみえた。


 それから俺たちは、しばらく話をしていた。俺の過去のことについてさらに詳しくだったり、彼女の高校お生活の話だったりと積もる話をしていた。



*****



「もうこんな時間だしそろそろ帰ろうか中野さ…」

「海人君、呼び方間違えてますよ」

「ああ、ごめんごめん唯ちゃん」


 俺たちは、付き合い始めたということで、昔と同じように名前で呼び合うようにしていた。


 俺たちは、これからどうなっていくのかはわからないが、1つだけ言えることは大学生活が今までと一変し明るくなることだろう。


 俺は、今まで失ってきていた青春をこれから彼女と取り戻していけたらいいと思う。









        


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