第33話 テキーラ ホセ・クエルボ エスペシャル レポサド ゴールド

 というわけでテキーラを選ぶのだが、実はテキーラは飲んだことがない。テキーラを使ったカクテル――マルガリータやテキーラ・サンライズなど――も飲んだことがない。

 酒屋の棚を見てみると、「サウザー」や「オレンダイン」などいろいろとある。


 「オレンダイン ブロンコ」は250mlの物(瓶がソンブレロとマフラーを着けている。かわいい)があるが、ちょっと足りない。

 適当なものを探していると、近所のスーパーで「ホセ・クエルボ・エスペシャル ゴールド レポサド」の350mlが1000円ちょっとで売っているのを見つけた。ブロンコのオレンダインよりもテキーラとしての個性が強そうな気がしたので、今回はこちらをチョイスした。


 調べたところによると、「ホセ・クエルボ」が設立されたのは1795年。現代も使われているハリスコ州のラ・ロヘーニャ蒸留所は1812年設立だという。

 現代においては世界のテキーラのシェアの3分の1を占めている、テキーラ界の大御所の一つだ。ちなみに、日本ではアサヒビールが輸入と代理販売を行っている。


 「ホセ・クエルボ エスペシャル ゴールド レポサド」は名前の通り2か月以上熟成した「レポサド」で、色は金色をしている。熟成をしていない「ブロンコ」の「シルバー」もあるようだが、せっかくなのでレポサドの方を使用する。

 色は薄い金色で、薄く作ったべっ甲飴のような、夕暮れ時の日光が液化したような、そんな印象がある。ウィスキーと同様に樽で熟成しているので、香りは似たところがある。

 ただ、ウィスキーのそれが木を燃やした時のようなものとすれば、テキーラのそれは草や竹を燃やしたときのような、薄く広がるタイプの煙を思わせた。

 そして、独特な「青さ」とでも表現できそうな、不思議な香りがある。野菜などが持っているような植物質の、なんとも例えにくいが香りがある。

 不快な感じはないが、とりあえずそういうエッセンスがあるのだ。


 飲んでみると、口当たりはウィスキーより強めだが、飲みづらいこともない。

 しばらく口の中にとどめておくと、舌に辛さのような熱さが広がってきた。飲んでいるのが酒だと知っていなかったら、はっきりと「辛い」と感じたと思う。辛口の酒とかそうした物とは全く異なる、はっきりとわかる熱さを感じた。

 ただし、飲み下す時にはそれほど焼けるような雰囲気はなく、「辛さ」は舌の上にしばらく残っていたものの、やがてすっと消え、口の中には、独特の燻された香りがとどまった。

 香りはかなり強く残り、グラスを空にしたにもかかわらず匂いを発し続けている。普通に飲み干すにはちょっと刺激が強いが、飲んだ後にお香のように香りを楽しめる気がする。これは面白い。

 梅酒にした場合、いったいどうなるのかが想像もつかない。

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