第19話 ウイスキー
西洋のスピリッツの代表の一つであるウィスキー。原料は大麦やライ麦、トウモロコシなどなど。
これを麦芽の酵素で糖化して、酵母の力でアルコールにしてから蒸留、という手法で作られる。
醸造の過程はホップを使わないことを除けばビールとほとんど同じで、ウィスキーはビールの蒸留酒と言えるかもしれない。ちなみに、ビールのように麦芽で作った醸造酒は「モルトワイン」とも呼ばれている。
大きな特徴は木の樽で貯蔵して熟成させる点。
ウィスキーも蒸留した直後は焼酎と同じように無色透明だが、樽に入れて何年か熟成させることで木のタンニンが抽出され、あの琥珀色と香りが付く。
そうして熟成させた後、樽から出して水を加えて度数を調節し、瓶詰めして出荷する。
水を加えない樽出しの原酒は度数が60以上になり、そのまま瓶詰めしてちょっとお高めの値段で売られることもある。もちろん火炎瓶の材料にしてはいけない。
ウィスキーが生まれた地についてはスコットランド説とアイルランド説があるが、どっちが正しいかははっきりしていない。
名前については、蒸留アルコールの呼び名である「アクアヴィテ(命の水)」が、スコットランドやアイルランドに伝わると現地のゲール語やアイルランド語に直訳されて「Uisge Beatha」や「Uisce Beatha」(ウィシュケ・ビャハ)と呼ばれるようになり、そのうちに「命」を意味する「Beatha」が略されて「水」の部分が訛り、最終的に「ウィスキー」となった、ということらしい。
現代の英語の綴りでは「Whiskey」と「Whisky」の2つがある。どちらが正しいというわけではないが、eが付く方はスコットランドとアメリカで一般的で、eが無いほうはそれ以外の地域で使われている。
アメリカでも醸造所によってeが無い方を使っていたりもするので、とりあえずボトルのラベルを見ればどっちを使えばいいか分かる仕組みと考えればいいだろう。
イギリスに伝わったウィシュケ・ビャハが最初に作られたのがアイルランドなのかスコットランドなのかは定かではないのだが、いずれでも最初のうちは樽での熟成をしていなかったので、見た目が無色透明だったことは確かだ。
このころのウイスキーは蒸留技術の低さから度数は20程度で、元の酒を発酵させる段階でハチミツやハーブを入れて香り付けをしていたようだ。
そして現在のように褐色の見た目のウィスキーが作られるようになったのは、スコットランドが最初とされている。
18世紀初頭にイングランドとスコットランドが合併すると、スコットランドの醸造所への課税額が大きくなった。酒税が高くなると酒の密造が増えるのは世の習いで、節税したい業者、あるいは払えなくなってモグリになった業者はこっそりと酒を造った。
この時は蒸留の時の煙が見えないように夜に作業を行い、作った酒は樽に詰めて地下などの見つかりにくいところに隠して貯蔵した。
こうして偶然にも樽塾生が行われるようになって、無色透明で味の荒かった酒は、褐色で熟成された落ち着いた味のウィスキーへと進化した。
税負担が軽くなって以降も樽で熟成するやり方だけは残り、現代まで受け継がれることになったのだという。
今日ではウィスキーは世界中に広まったので、ウィスキーと一口に言ってもかなりいろいろな種類がある。
同じ麦芽100%のシングルモルトもあれば、いろいろな製法・材料で作った物を合わせるブレンデッド、ブレンドをしないシングルカスクなどなど。
スコッチはスコットランド原産で、麦芽に熱を加えて成長を停止させる時に、燃料としてピート(泥炭。枯れた植物が堆積して出来た石炭の一種)を使うので、その特有の香りが付く。
バーボンは貯蔵に内側を焦がした樽を使うことで、バニラの様な香りを付ける。
アイリッシュ、イングリッシュ、アメリカン、テネシー、カナディアン。近年はジャパニーズウィスキーが大躍進を遂げて、伝統的なイギリス系ウィスキーをしのぐ評価を得ている。
その他にも、ドイツや台湾、インド、南アフリカなど、かなりいろいろな国や地域で作られてもいる。
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