第12話 焼酎②

 現在の日本の法律では、焼酎として売るためには、次の基準を満たしている必要がある。

1.指定された原材料以外は使わない

2.度数は単式蒸留なら40度未満、連続式蒸留なら36度未満


 この2つを守った上で、他の酒との区別のために次のルールを満たしている必要がある。

・原料に麦芽を使っていない(ウイスキーと区別するため)

・原料に果実を使っていない(ブランデーと区別するため)

・白樺の炭で濾過していない(ウォッカとの区別のため)

・蒸留後にハーブなどを漬けていない(ジンとの区別のため)

・原料に糖蜜を使わない(ラムとの区別のため)


 さらに、焼酎の基準を満たしている物も乙類(本格焼酎)と甲類に分けられている。

 乙類は単式蒸留で作られる旧来からの焼酎。甲類は連続式蒸留で作ったアルコールに香りや味をつけた物だ。

 後者については大量生産しやすいので安い酒に使われたり、チューハイやカクテルのベース、ジンやウォッカといった他のスピリッツの代用品にされたりする。梅酒シーズンに青梅・氷砂糖の隣に並んでいるホワイトリカーも甲類焼酎で作られていることが多い。


 この甲類・乙類という分類だが、甲乙で分けると伝統ある方法で手間をかけて作っている方が乙で、劣っているかの様に見えてしまう。このためにメーカー側からの要望で「本格焼酎」という表記が可能になり、現在では乙類の代わりに本格焼酎と記載するのが一般的になっている。

 近年では乙類でもコーンスターチ(トウモロコシのデンプン)を使った低価格物も出ているが、元がデンプンなのでやっぱり個性はないのだろう。

 甲類の安さと乙類の個性を合わせたり、飲みやすくしたりするために、両者をミックスした混和焼酎というのもある。


 甲類焼酎ではホワイトリカーを使った物とあまり変わらないため、今回の実験に当たっては本格焼酎で、尚且つ一般的な麦と芋をチョイス。

 米焼酎は適当な物が見つけられず、代わりに泡盛を使うことにした。


 本格焼酎の原料に使われるのは、米、麦、芋(サツマイモ)が一般的だ。それ以外にも合わせて49種類が認可されており、これらを麹を使って発酵させれば本格焼酎となる。

 ソバ、栗、ジャガイモ、トウモロコシ、ゴマ、黒糖を使った物は、酒屋に行けばそれなりに目にすることができる。

 アズキ、銀杏、くず粉などの変わり種もあり、さらには、マタタビ、ホエイパウダー(プロテインに使われるアレ)、ワカメ、ネギ、ノリ、脱脂粉乳、ピーマン、アロエなど、もはや意味不明な物を使って作ってもOKとなっている。

 デンプンがほとんど含まれていないような物や、そもそもタンパク質主体の物などもあるのに、一体どうやってアルコールを作らせるのかが想像できない。風味付けとして他の材料と一緒に使うのだろうか?


 そういえば、かつてクワイの焼酎を飲んだことがあった。味の方はと言えば、はっきり言ってマズかった。一緒に飲んだ人も全員が同じ評価を下した。

 色々な原料を使ってもOKとはいえ、それを美味しく焼酎に出来るかどうかということはまた別問題といえるだろう。

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