指先の呟き・4

基維ひなた

第1話 鞄

「怖い話いりませんか」

街灯の下、重そうな鞄を提げた女がいる。

「たくさんあります」

好奇心から近づいた。

「ここにたくさん」

女が開いた鞄を覗き込む。

無数の腐った手が伸びて私を引きずり込んだ。

「うふふ、たくさん」


ああ。

女が鞄を開くのが待ち遠しい。


「怖い話いりませんか」

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