ここでキスして

彩歌

プロローグ

彼方結おちかたゆい、性別はΩか」


 教師になって4年目の春、私は初めてクラスの担任をすることが決まっていた。今はクラスの名簿を見ていたところだ。


(差別じゃないけど、やっぱりΩの子にはいろいろと配慮がいるなぁ。だからって気にし過ぎたら、贔屓みたいになっちゃうしなかなか難しいなぁ)


 世の中には男女以外の性別が存在する。α、β、Ωの3種類だ。1番多いのはβで、いわゆる一般人だ。次に多いのはαで、こちらはいわゆるエリートだ。最も希少なのはΩで、Ωには定期的に発情期が来て、薬が進歩したとはいえ、まだまだ仕事や学校を休まなければならないので、その地位は低く、差別意識を持つ者も少なからずいる。


水無瀬みなせ先生も大変ですね。いきなりΩの子の担任になるとは」


 私は先輩教師の無神経な言葉に苛立ちを感じずにはいられなかったが、そこはそうですねと笑って誤魔化した。


「水無瀬先生はαだからいろいろ苦労とか知らなさそうですよね。なんでもできて、すごい美人ですからね。人生イージーモードだ」


 αはαでこういう風に言われることが多く、嫌気がさす。


「あれ、彼方さんが新入生の挨拶……?」

「びっくりするでしょ?Ωの子が入試トップだったんですよ」

「相当頑張ったんでしょうね」

「えぇ」


 私はまだ見ぬ彼方さんに思いを馳せていた。

 どんな子か会うのが楽しみになっていた。



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