雨に誘われて

もりくぼの小隊

あたしの好きな人


キスをした。

あたし、新井田あらいた夏広かひろはキスをした。

一元いちもと朱雨しゅうさんにキスをした。

ほんのちょっとなみじかなキスをした。


唇が触れた頬は暖かくて柔らかい。ミルクコーヒーみたいな優しい香りがする。

朱雨さんは不意打ちを食らって頬を朱く染めあげて可愛い。


このキス、急すぎたかな……ごめんなさい。見つめてくる垂れがちな茶色の瞳は動揺してる。それが可愛くて、ステキで、無重力なフワフワ浮ついた気持ちは時を進めてなんてくれないみたい。今なら過去にだって、戻してしまいそう。今のキスは、不思議で特別な時間が流れてた気がする。


あたしは「イタズラ」とだけ呟いて舌を小さく出した。朱雨さんは胸に「冗談」の二文字を咲かせたのだろう。ホッと息をついている。


でも、冗談じゃないよ。ごめんね、秀雨さんは、お兄ちゃんのなのに。勝手に好きになっちゃって。


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