フューチャー・プラネット

海湖水

1.未来の星

        未来の星 


    「文明が緑にのまれていく」

 

 そう言い表すしかないような風景が結花の目の前に広がっていた。

 都市の中央にそびえ立ち、建造物を長い年月をかけて破壊する巨大樹には、たくさんの鳥がとまっている。かつて私と同じく地球から移住し、都市を育てた人たちの生活した跡は消え去ろうとしている。そう思うと何度も胸が締め付けられる。

 結花は巨大樹の根に沿って、船へと移動していた。地上を歩くよりもはるかに安全で、結花が着ているボディスーツのおかげもあってか、建物の少ない場所のほうが移動しやすいからだ。

    

    この星に来て一ヶ月がたった。


結花の母星は、「チキュウ」から遠く離れた小さな星である。「チキュウ」では2132年に人口が限界に達し、他の星への移住が始まった。結花の曾祖父母は「チキュウ」から結花の母星へと移住を決意し、たくさんの人々と共に暮らしはじめた。

 しかし問題は起こるもので、人口の増加が激しく、この星も人口問題が発生した。そのため政府(「チキュウ」の指示を受けていない自治政府)は、他の星へと調査員を送り、住める星を探し出した。結花はその調査員だった。

 遠くの星まで調査に行くため、調査対象の星につくまでの数十年間はコールドスリープを使う。母星に帰ると現在開発中のタイムマシンで、過去に帰ることができるようにされており、過ぎ去った年月は全て取り戻すことができる。それでも、結花は調査報告をし終わったら早く母星へと帰りたかった。

 だがこの星に着陸するときに、結花の船の一部が壊れてしまった。そのため修理をする長い間、この星で調査報告を遠隔で母星にする生活を続けなければならない。(ちなみにこの星と結花の母星は離れているため報告は結花からの一方通行である)

 この都市を作ったのは、曾祖父母と同じ「チキュウ」の移住者なはずだ。この都市がこんなことになるなんて、誰も思っていなかっただろう。


 「根が建物と一体化してる。これを引き剥がすのは無理か……」


 この都市の調査は、根に沿って移動することで比較的楽に進んだ。だが、結花が着ているボディスーツがなければ調査は難しかっただろう。まあ、結花はこのスーツが苦手だったが。

 結花の見た目は普通の女子高生であり、見た目は美人の部類に入る。銀髪に青い目、白い肌は友人にも羨ましがられていた。見た目にコンプレックスを持ったことはない。

 しかし、体のラインがわかりやすいこのスーツは他に人がおらず、自分の見た目にコンプレックスがないといえども、好きではなかった。できれば、普段着ている学校の制服を着たいが、この地形でそんなものを着て移動するのは不可能に近いだろう。だが、このスーツの作成者は母星に戻ったら一回殴ろう。そうしよう。

 そんなことを考えながら、結花は船にもどった。今はここで生活しているが、他の都市の調査には不便だ。いつか拠点を別の場所に移さねばなるまい。だがそれまではここで調査記録を書くことにしよう。

 そんなことを考えながら、今日も結花は通信機器の前に座った。

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