[追手の力]
めらりが口にしたその言葉が私の脳裏の深部の記憶を呼び起こした。
『お前が
物心ついた頃から幾度となく父や祖父から呪文のように言い含められていた
潜在意識に刷り込まれたそれは、いつ何をしていても私の意識の縛りになっていた。
義務教育の期間、学校という一般的環境のかろうじて一員ではあったがそこも奇異な場だった。
何故なら小中一貫のその校長も教師も他の職員もほぼ全員が
卒業後は外部の高校への進学はさせられず、またさらに縮小された〈勉強会サークル〉のような"和"の中で"独自の教育"を受けた。
そしてその時の出来事と認識の変化が結果的に私を今回の行動へと駆り立てることになった。
その結果が吉か凶か──それはまだ分からない・・・・。
────────────────────
「目・・・・ですか」
「ええ。あなたの目の奥には独特の揺らぎがある。妙な表現になるけど霊的な二重底のような」
「二重底??」
「そう。抑え込まれて表面化していない霊的なエネルギーが底の底に見え隠れしてる。そしてそのエネルギーがあなたが
「私の目が・・・・あ」
「え?」
ふいに脳裏に"ある目"が蘇った。
木山明日香。
病院の処置室からストレッチャーに横たわり出てきた時、声を掛けた私に一瞬向けたあの目。
殺意──確かにそれを放っていた。
明らかに、刺すように。
「なるほど、入られたわね」
「入られ・・・・た?」
あの瞬間のことを口にするとめらりはいかにも心当たるといった表情をした。
「ええ」
「?」
「要はあの子、いわゆる憑依体質なのよ」
「憑依体質!?」
その言葉の意味は分かる。
するとあの時のあの目、あれはつまり彼女に"入ったモノ"が私に向けた殺意? ということなのか ──
「そう。それで明日香が子供の頃の一時期、私が関わったのだけど・・・・にしてもあなたの追手は本当に手段を選ばない
「ではあの目の殺気は──」
「明日香自身じゃない。たぶん面を着けてた奴の
生魂飛ばし──思わず背筋に寒気が走る。
「十分あなたも知ってると思うけど、あの面を着けることが出来るのはそうとうな
「・・・・ということは──」
「ストップ。自分のせいで明日香が、とは思わない方がいい。少なくとも今は」
「でも・・・・」
「大丈夫。あの子の対処への考えはあるから今はとにかく自分のことだけ考えてなさい」
「・・・・」
どう考えてもはからずも私と接したせいで彼女が悲惨な事態に見舞われたとしか思えない。
が、その強い自責の念をまたも見透かされ、私は重い気持ちのまま黙って首を縦に振るしかなかった。
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