第51話 アダム王子とアミル皇女の結婚

「ええい!早く全ての店に連絡して各王家から借金を取り立てるのだ!!」


朝からサーガスの怒声がアビスバ商会本店に響き渡る。


サーガスも何もしていないわけでは無かった。


全ての店に貸し出している借金の取り立てを行わせていたのだ。


昨日くらいから少しづつではあるが借金返済の知らせが入っていた。


「少しおかしいぞ!あれだけ困窮していた小国までもが全額返済しておる。何故だ?」


そうこう言っているうちに次々と借金返済の報告が入ってきた。


「まあ良いわ。こんなはした金、闇金への返済にも足りぬが、無いよりまし。

これからはダイヤの賃料が入ってくるしな」


「旦那様、大変でございます。各店舗から続々と入ってくる情報によりますと、借金の返済は滞りなく終わったが、ダイヤの貸し出しにはどの国も応じないとのこと。


どうやら、王国からダイヤが無償提供されたようなのです」


「......アダム王子の仕業か......バタン!!」


「旦那様!旦那様!誰か!!誰か!!旦那様が倒れられた!!」


怒りのあまり頭の血管が切れてしまったサーガス。なけなしの金はその治療費と消えるも、下半身不随となってしまった。


彼に残ったのは闇金の借金。そして既に返済能力が無くなった彼を闇金が放っておくわけもなく、翌日には全ての店舗と少しの資産は膨大なダイヤと共に消えてしまったそうな。



そしてその3日後、帝国は軍隊を出動させ、一斉に闇金の取り締まりを行い、全ての私財とダイヤを回収したと連絡が来たそうだ。





「いやあ、本当にいい天気だねセバスさん」


「旦那様、御髪が少し乱れております、サッサッサッサッ」


今日はアダム王子とアミル皇女の結婚式だ。


ちょうど国境の砦があるこの街の教会では盛大な飾り付けがなされており、近隣を含むこの辺り一帯が結婚式場の様相を呈している。


この辺り一帯、王国領、帝国領合わせて10ほどの街や村は歓迎ムード一色だ。


実はここ、今回の功績により俺が貰った領土である。


「何が欲しい」って聞かれたから、「温泉の出そうな火山の近くの土地が欲しい」って軽い気持ちで言ったら、こうなった。


この辺り元々王国と帝国の間の交通の要所であったのだが、今回の経済・軍事同盟の影響もあり、大陸中の国が行き来するための要所となっている。


「ここに温泉を作れば儲かるんじゃないか」ってアダム王子は言ってたけど、あれは本心じゃないね。だってサーガスを騙すときに垣間見せたあの笑顔がチラ見したもの。


どうせ、国の間で問題が起きた時は、ここが一番最初にそれを被るだろうから、しっかり治めろよってことなんだろうな。つまり厄介な場所を押し付けられたのかも。


でもね、ここは本当に風光明媚で良いところなんだよ。少し高原になってるので夏の暑さも控えめだし、火山が近いからか、冬でも結構温暖なんだよね。


向こうの世界の結婚式を研究し、新郎新婦にヒヤリングをしながらプロデュースしたから、結婚式自体は大盛り上がりしてた。


参列していた各国のご令嬢達の目もうっとりしていたし、これがこの世界の結婚式のスタンダードになるかもね。


敏腕結婚プロデューサー ハヤトの大活躍はまた後ほどの話しで。


とにかく、皆の明るい顔が一番だね。


さて、無事に式も終わり、遂に新郎新婦が外に出てくる。


教会内も物凄い人だったけど、外には雲霞のごとく、人の波が出来ていた。


そして新郎新婦が扉から出てくると、ライスシャワーの嵐。


文字どおり生米にしたかったけど、この世界に米は無い。


仕方ないので、小麦にした。


そして小麦の次はシャボン玉が飛ばされ、盛り上がりは最高潮に。


「皆、ありがとう。幸せになるよ!」


アダム王子カッコイイ。


アミル殿下は両手に持ったブーケを後ろ向きに投げる。


おっと、すぐ下に落ちそうだ。


風魔法で少し上昇させてやる。


ふわりと上がったブーケは王国の男爵家の2女が受け取った。


まだ5歳だけど、幸せになってね。


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