第44話 イベントを終わらせちゃった
一夜明けて翌朝、皆んなで昨日の戦闘現場へと向かうことにした。
徒歩で15分くらいのそこには、昨日の戦いの残渣が残っている。
切り倒された大量の木。
広範囲に焼け焦げた大地と切り株。
堕天使の姿は無い。聖なる炎で焼き尽くされたからね。
「こりゃ凄え。
これだけの炎を撒き散らす奴ならあの山の爆発も間違いなくこいつのせいですぜ」
皆んな騙してスマン。これは全部俺の攻撃だ。
収納に入れてあったダイヤモンドのダンジョン地下30階層の新種魔物の爪と牙を今回暴れた魔物の解体した素材としてでっち上げることにした。
しばらくはバレることも無いだろう。
「さぁ、ファンタスの街に凱旋しよう!」
討伐証明もあるし、これだけの冒険者が討伐を証明してくれるだろう。
俺が率いる調査隊一行は、意気揚々と俺達の街ファンタスに向かって帰路につくのであった。
ゴメンね皆んな、茶番に付き合わせて。
元気が有り余っている若手冒険者達を先行して街に戻らせてる。
だから俺達が街に戻った頃には、既にお祭り騒ぎになっていて、帰還を歓迎してくれる街の人達の人混みをもみくちゃにされながら、ギルドへと戻った。
「おう、ハヤト。ご苦労だったな。
お前なら始末までつけてくれると思ってたよ」
「これ、討伐証明です。初めて見た魔物でした」
「分かった。後で鑑定に出しとく。
とにかく、お前の帰りを皆んな待ってたんだ。
街の英雄殿!」
ニコニコ顔のボウケンさんにバシッと肩を叩かれ、そのまま、外へと連れ出される。
ギルドの前では、今回参加した冒険者達が、質問攻めに合いながら既に酒盛りが始まっていた。
「調査に参加した冒険者達、ご苦労だったな。
領主様からも特別報奨金が出てるぞ」
「「「うおーーー」」」
「そして、今回の調査隊を率いて、全員無事に帰還させただけでなく、元凶を仕留めて戻った英雄の登場だーーー!」
「「「うおーーー」」」
「「「うおーーー」」」
「「「うおーーー」」」
全く、俺を英雄に仕立てて何をしたいんだよ、ボウケンさん。
この世界の人は本当にお祭り好きだよな。
プレーヤーとして見ていた時は無機質な奴らだと思ってたけど、自分もNPCとなってみるとよく分かる。
いつ魔物に襲われて死んでしまうかもしれないこの世界では、今を一生懸命に生きようとする活力みたいなもので溢れかえってるんだ。
それに比べたら、日本で毎日仕事に追われて生活している方がよっぽど無機質だろうな。
とにかく今日は飲んで飲んで飲みまくるぞ!
一夜明けて、冒険者ギルドには無数の屍が転がっていた。
「旦那様、お迎えに参りました」
聞き慣れた声に、机に伏せていた顔を上げると、セバスさんの微笑みがあった。
「昨日のご活躍お聞き致しております。
お疲れ様で御座います。
お風呂を沸かしてお待ちいたしておりますので、お屋敷に戻りましょう」
「…はい」
どうやら昨日は飲み過ぎたようだ。
二日酔い自体は浄化魔法ですっかり回復しているのだか、なんとなく気持ち悪い。
「セバスさん、帰りましょうか」
セバスさんの手を取って転移を発動した。
「ふぅーー、朝から贅沢だなー。
ふふふ」
朝風呂に浸かりながらひとりほくそ笑む。
「思ったより上手くいったな。
でも、もしプレーヤーとしてあのイベントに参加するのはムリゲーだよ。
でも待てよ!俺がイベントを起こしたのは間違いないんだけど、実際のゲームの世界ではどうなってるんだろう?」
考え出すと気になって仕方無い。
「ちょっと戻ってみよう」
風呂を出て、用意されていた食事を食べた後、俺は書斎に籠もると言って、書斎の隠し地下室のダンジョンから現実の自宅に戻った。
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