マネーorライフポイント、どちらを優先する?負ければ死と破産を選ぶ。

霜花 桔梗

第1話 お節介なお姉さま

 私は『笠崎 薫』ごく普通の女子高生だ。


 ある日、担任に校内の端にある旧喫煙室から机を持ってくる様に頼まれた。校内でもこの辺りは暗く寂しい気分だ。


 うん?


 旧喫煙室から声が聞こえてくる。この感じ嫌な予感がする。私は迷ったがここは頼まれ事だ、実行あるのみ。


 そーと中に入ると。


 そこには、女子が三人いた。


「『魔女狩り』の掟に従い、導かれた者か?」


 一人の女子が声をかけてくる。それは、凄まじい威圧感であった。私は脅えながら担任に頼まれたと言う事にした。


「いや、机を取りに来ただけです」

「十分すぎる、理由だ、私の名前は草津だ、この『スクールマスター』のギルマスだ」

「ギルマス?」

「そうだ、魔女狩りで『マネーorライフポイント』を勝ち抜く為に作られた組織だ」


 噂で聞いたことがある。


 課金をして強くなると現実世界の街に潜む『魔女』を狩り。報酬はマネーとライフポイントのどちらかを受け取るシステムだ。


 負ければ、ポイントが減り、ライフポイントがゼロになると死ぬ。勿論、マネーを選び破産しても生きている意味があるのかは疑問に思う。


 とにかく、担任のお使いを優先して机を運ぶことにした。


 私が机を持って教室まで行くと担任の先生が教卓に向かい書き物をしていた。


「先生、旧喫煙室ですけど、『スクールマスター』なる人達が居ましたよ」

「おかしいな、あの部屋は誰も使っていないはず」

「『魔女狩り』に成らないかと誘われました」


 !!!!


 担任の先生は驚いた様子である。


 そして……。


「いいな、働かなくてお金が貰えるのか」


 この言葉が噂の範囲内での『魔女狩り』の認識である。しかし、現実は違う。あの『スクールマスター』の面子の雰囲気は死と隣り合わせの目をしていた。


 その後、自宅に帰ると夕食はカップ麺を食べる。両親は仕事が忙しく、家事は私がするのだ。しかし、最近、食生活が貧しくなった気がする。


「ただいま」


 そして、仕事から母親が帰ってくる。


「母さん、私、『魔女狩り』に選ばれた」

「本当なの!!!」

「えぇ」

「早くお父さんに電話しなきゃいけない」


 母親はスマホを取り出すとウキウキ気分で電話をかける。


『あなた、薫がやったのよ。そう、『魔女狩り』に選ばれたのよ、これで働かなくて済むわ』


 まるで宝くじに当たった様子だ。担任の反応もそうだが。大人は皆、勘違いをしている。自分の娘が生死をかけたデスゲームに参加するのだ。


 その日は急な焼肉パーティーであった。わたしはカップ麺を食べたので食欲が無いと言い。自室に籠る。


 友達も居ない、兄妹も居ない。


 私が死んでも悲しむ人はいない。そんな気分でベッドに横になり天井を見上げていた。


 翌日、私は再び旧喫煙室に向かう。


『魔女狩り』の攻略ギルド『スクールマスター』の面子に会う為だ。


 本当に、私は『魔女狩り』に成れるのであろうか?


『魔女狩り』が噂通りなら私のマネーは鰻登りである。


……。


 ギルドメンバーは顔を合わせて笑っている。


「確かにこの『魔女狩り』はお金になるわ。ただし、魔女は簡単には殺せないし、ライフポイントが無くなれば死ぬわ」


 ギルマスの草津さんが真剣そうにして話す。大人達は楽観的だ、働かなくていいお金が簡単に手に入ると決めつけていた。


「では、何故、お金に困らない等と噂を流す?」

「それは、本当に大金持ちになって豪邸を建てた人物がいるからよ」


『……』


 私が黙り込み下を見ていると。


「ホント、何も知らない初心者さんなのね。分かったわ、私がスールとして面倒みてあげる」

「スール?」

「そう、スール、契約を交わしてお互いに助け合うの」


 私は一人で生きてきた。例え『魔女狩り』になろうと関係ない。


「その目、気に入ったわ。貴女はもう私のモノよ」


 やれやれ、お節介な、お姉さま、姉妹の真似事でもいいか。


 こうして私に友達ができたのであった。

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