第17話 惑星エルーカ

 ハッチが開き、輸送船とともに宇宙空間へ出ると、立ち入り禁止星域を迂回して惑星エルーカに近付けるところまで行き、そこから偵察機のすきをねらって着陸する予定だ。


 自動操縦に切り替えると、後部座席にいるマーティに「エルーカはどんな星なんだ? 住人はいるんだろう?」

「あの星は衛星くらいの大きさで、一つだけ軌道きどうがズレてるんだ。陸の殆どが原生林におおわれて、小さな村が幾つかあるだけの未開発星だ」

「秘密基地がありそうだとかんぐられたりしないか?」

「そんなものを造れるほどの予算があると思われてないから、考えないだろう」


「実は?」

「ヴィラパス系は鉱石が豊富に採れるので、さまざまな研究が行われてる。理不尽な条約のせいでその功績を横取りされてしまうことになったが、抜け道を作ることは難しくない。俺たちは地下組織を結成し、秘密裏ひみつりに研究開発したものを使い、拠点となる地下基地を建設して組織を大きくしていったんだ」


「その地下組織のメインメンバーが、君たち支局員ということか」

「ああ」

「その秘密基地の一つがエルーカにあるのか?」

「そうだ」


 しばらくすると目的のエルーカが見えてきた。話に聞くとおり小さな星である。


 ロイは機を停止させてエルに通信を繋ぐと「偵察機の様子はどうだ?」

“一時間おきに回ってる。あと十分ちょっとしたら離れるよ”

「わかった」返事をすると通信を他の機に繋ぎ「ここからシールドを張る。十二分後に向かうので、準備して合図を待て」


 エルから偵察機が離れたとの連絡を合図に、エルーカへ向けて発進する。


 大気圏を抜けて海が見えてくると「このまま北上してくれ」マーティの指示に従い低空飛行を続ける。


 この星では戦闘が行われていないため、平和な景色が広がっていた。


 さらに進んで半島らしき陸が見えてくると「前方にとがった山が三つ並んでるのが見えるだろう? あそこの地下に基地がある」


 近くまで行くと、三つの山が横一列に並んでいる。


「右端の山を二回、旋回せんかいしてくれ。無事に仲間が着いてれば滑走路が出てくるはずだ」


 言われたとおりに旋回すると、山裾やますその森が二つに割れだした。


「見ろ! 滑走路だ!」


 全機が着陸すると地下へ降りていく。


「かなり深いな」


 しばらく降りていき、止まると電気が点くので、ハッチを開けて外にでる。


「マーティ。基地内のことはわかってるか?」

「ああ。建設時に立ち会った」


 一緒にきたクルーにはその場で待機してもらい、マーティと基地内へ入っていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る