調和

核の使い道

 処刑隊殺した後、紗枝達は砦で一泊することになった。

 砦内の広場では、恨めしそうにウェイ達を睨んでくる人間達がいた。


 ウェイ達は気にしていないようだが、紗枝は思う事がある。

 なので、先に居館へ行かせて、残った紗枝は人間達を集めて、しばらくの間、話をすることになった。


 *


 砦の外で夜風に当たっていると、いつぶりか。

 ウェイが声を掛けてきた。


「アンタ、やっぱすごいね」


 紗枝の快勝を自分の事のように喜んでいた。

 町は滅ぼされなくて済むし、帝国側には威を突きつけたろう。

 ずっと溜まっていた鬱憤が少しでも晴れ、ウェイはスッキリした表情で坂道に座る紗枝の隣へ腰を下ろす。


「……ありがとね。感謝してる」


 紗枝は手に持った球体をずっと弄っていた。

 何てことはない。

 何かに使えないかな、と敵の心臓を研究しているのだ。


 返事がないので、ウェイが顔を向けると、手に持った物を見て眉をひそめた。


「それ、……スライムの核じゃない」

「スライム?」

「ぐにゃぐにゃした軟体の生き物。水辺にたくさんいるんだよ。それ、どうしたの?」


 ウェイ達に引き上げてもらった時には、すでにスライムの原型は留めていない。また、ボイドは塵一つ残さないで消えてしまった。


 何があったのかは、詳細まで話していない。

 ただ、「敵を始末した」とだけ。


「んー、わたしが殺した相手の心臓っぽいんだよね」


 斬り殺すつもりだった。

 容赦なくほふるつもりであったのに、抵抗が弱くなっていた時点で、紗枝の心境には変化があった。


 数が増えれば脅威となったトーチェは、実のところ儚い生き物であった。その感覚は、と同じ感覚だ。


 ――殺さなくてもいいか。


 ふと、そんな考えが過ぎったのだ。


「ちょっと。それって、人間は魔物を使役してるってことじゃない!」

「ふぅん」

「待って。魔物を使役する方法なんてあったかしら。パテーは、……知ってるかも。でも、スライムなんて、感情がない生き物よ。おいそれと言う事を聞ける知能なんて……」

「ねえ。ウェイ殿やい」

「な、なによ」


 核を見せ、紗枝は言った。


「こいつって、わたしの言う事は聞くのかな? ていうか、これって死んでるの?」


 ウェイは唖然としてしまった。

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