第119話 手強い相手である
「え? 今なんでもするって言ったかしら?」
「あぁ、確かに言ったな」
なので俺は大きな餌(リスク)をぶら下げて麗華を釣る事にする。
何事もリスクなしで自分の思い通りに物事が進んで行くと思ったら大間違いである。
そんな事は一部の天才か夢物語でしかあり得ないので魔術保有量と特殊な経験をしてきた以外はいたって普通の、そこら辺にいる男性と大差ない一般人でしかない以上、何かしら成したい時はそれに見合った何かしらのリスクを背負わなければならないだろう。
「分かった…………いや、ここで何も考えずに脳死で判断するのは愚かね……」
そして、俺がここまでのリスクを背負っても尚、俺の横を引っ付いて歩く(というか文字通り引っ付いているので歩き辛い。だが胸がたまに当たるので良しとしよう)麗華は、まるで野生動物並みの嗅覚と警戒心で、一度その、俺が垂らした餌で納得しかけるのだが寸前の所で引き返すではないか。
こういう直観力も高いからこそ、麗華は今の魔術師としての強さがあるのだろう。
「何をそんなに警戒しているんだ?」
「……そうね、例えば今ここで私がその提案を飲んだとするわ」
「あぁ……」
「その場合は、そうね……今日から犯人が捕まるまでの日数、ここで言うところの本来であれば東條様とイチャイチャ……ではなくて、一緒に過ごして東條様に守ってもらえるという状況以上の旨味がその『何でも言う事を聞く券』とやらにはあるのかしら?」
く、こ、コイツ鋭いな……っ。
「あ、あるかもしれないだろう?」
「ならば、今日から犯人が捕まるか危険が無くなったという報道がされるまでの日数に、プラス一日だけ増やした日数を東條様の側で過ごすという願いは有効かしら? 更にいうと、その『何でも言う事を聞く券』は勿論
流石麗華である。 俺が思っている以上に頭が切れるようで、早くもこの『何でも言う事を聞く券』の穴を攻め始めてくるではないか。
そして、大事なのはここで嘘を吐かないという事である。
ここで一度でも嘘を吐き、誤魔化そうとした瞬間麗華は間違いなく『何でも言う事を聞く券』という大きな餌に見向きもしなくなるだろう。
正直な話俺が何でも言う事を聞くとは一言も言っていないので適当に斎藤博士か中島助手を生贄に捧げようとしていた上に、斎藤博士か中島助手ができる範囲の願い限定という事にする筈であったのだが、なかなかどうして手強い相手である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます