第109話 間違いだらけなんだよなぁ



「あら、私は一向にかまわないわよ? 言いたい人には言わせておけば良いのよ」

「え? いや……まぁそうなんだが……」


 しかしながら麗華は俺の話を聞いているにも関わらずそれがどうしたと言わんばかりの返答に、俺は少しばかりたじろいでしまう。


「確かに、東條様の言わんとしている事は分かるわよ? 軍に疑われたり、その結果例の男性魔術師の正体が東條様だとバレたらいろいろと面倒くさいから極力怪しまれないように行動をしようって話よね?」

「まぁ、ずっとそう言ってんだけどな……」

「でも、東條様はどうせ最終的にバレても良いやって思っている……違うかしら?」


 そして麗華は割と鋭いところを突いてくる。


 極力軍関係にはバレたくないと思っているのだが、それは麗華の言う通り絶対にバレたくないという訳ではなく、最終的にバレても良いと思っているのは確かである。


「まぁ、バレるときはどんなに気を付けていてもバレるしな……」

「そう、それよ。 普通だったらそんな風には思えない筈よ。 そもそも半ば無理やり私が拉致るようにして斎藤博士のいる研究所まで来た時から疑問に思っていたのよ。 バレたくないと言いつつ、バレてもおかしくないような行動をしている事に。 でも、よくよく考えれば当たり前よね……。 だって東條様はバレてもどうにでもできるだけの、圧倒的な強さを持っているのだから。 だから見つかりたくないと言っている軍関係に例え見つかってしまったとしても町の外へ逃げれば良いし、なんならその圧倒的な力で鬱陶しいと思った連中を片っ端から追い払う事だってできてしまう。 だから危機感が足りなすぎるような矛盾した行動を取ってしまう」


 そこまで麗華は一気に話すと『どうかしら? 当たっているでしょう?』言いたげな表情で見つめてくる。


 正直いうとほぼほぼ合っていると言って良いだろう。


「そして、それは言い換えると私の両親に『娘さんと結婚をさせてください』と今すぐにでも言って私と結婚してもいいとも思っている。 故に、この合鍵は私が持っていても何も問題なければこの家の鍵穴を変える必要はない」


 そして俺の反応を見た麗華はしたり顔で更に話を続けるのだが、さっきと打って変わって間違いだらけなんだよなぁ……。


「いや、最後意味が分からないんだが? 流石に突拍子が無さ過ぎるというか、ハンドルを切りすぎだろう……。 一体どのような推理をすればその答えにたどり着くか皆目見当もつかないし、そもそも間違いだし、鍵穴は変えるし、麗華のご両親に結婚の挨拶はしに行かないんだが?」

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