第107話 鍵はしっかりと閉めていたはず
この装備であれば元々魔術師ランクがB級であってもA級までは圧倒して倒す事ができるだろう。
しかしながら、悔しいが天才という者はごく少数ではあるものの存在する訳で、特に魔術師ランクがAともなればその天才と当たる確率も比較的高いだろう。
万が一最悪の事態を想定して私たちは三人で一人の魔術師を倒す作戦で動くことにした。
「大丈夫か?」
「えぇ、何とか……」
そして頭では理解できているものの、いざ本番となると急に緊張感から身体が震えて来る。
当たり前だ。
いくら今まで練習したりシミュレーションをしてきたといえども命のやり取りは初めてなのだから。
取り敢えず、このままでは練習通りに動けないであろう為、私は二度三度と深く深呼吸をする。
「……来たデス」
「……確かに、あの顔は間違いないわね」
「裏であんな事をしておいて、表でのうのうと生きていやがる糞魔術師様のお通りだ。 ぶっ殺すっ!!」
そして私たちはターゲットの魔術師が路地裏へと向かった事を確認した瞬間、止めてあった黒いバン型の車から同時に飛び出すと路地へ入って行ったターゲットへ向かって走るのであった。
◆
『それでは次のニュースです。 昨夜未明、日本魔術師協会に所属している魔術師ランクAの近藤香苗二十六歳が何者かに襲われ、意識不明の重体──』
「最近物騒ね……」
「あぁ、そうだな。 それは良いとして、何で麗華が俺の家にいるんだ? 万が一つけられた場合とか想定して俺の家には来ない事になっていたと思うんだが?」
「え? 私たちは将来結婚する仲だし、今現在最早婚約者といっても過言ではない仲なのだから別に私が東條様の家に押しかけてなんらおかしな話ではないと思うのだけれども?」
「いや、結婚はしないし婚約者は過言だし普通に考えて男嫌いで有名な麗華が俺の家に押しかけてくるのはおかしいだろう……っ」
とりあえずさも当然のように俺が起きて来る前に焼き鮭、卵焼き、みそ汁、ご飯という一般的な朝食を作って待っていてくれた麗華に『なんで俺の家にいるのか?』と聞いてみるとちょっと意味が分からない事を言ってくるのでその全てに突っ込んで否定していく。
ここはきっぱりと否定しておかないとそのまま流されてしまいそうな上に気が付いたら婚約云々が冗談ではなくなっていそうな気がするのが地味に怖いんだが……。
まったく、あの日なんで俺は生徒手帳を落とすという頭の悪いミスをしてしまったのだろうか……。
「……あと、どうやって俺の家に入って来た? 確か鍵はしっかりと閉めていたはずなんだが?」
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