第91話 涙を流して喜んでくれるだろ


「麗華……?」

「それはつまり、今日は行ける所まで行けるという事でもあるのではないかしら……」

「麗華っ!」

「へ? な、何かしら? 急に大きな声で話しかけてこないでちょうだい。 ビックリするでしょう?」

「いや、ぜんぜん反応しないからだろうが……。 電車がそろそろ来るから急ごうか」

「そ、それもそうねっ」


 そして俺は妄想の世界に入っている麗華を現実世界に引き戻して俺たちが乗る地下鉄が停車する場所まで向かうのであった。





「見つけた……っ!!」


 今さっき確かに、そして長く、強くケイスケ・トウジョウが私の事を思ってくれていたっ!!


 それが嘘じゃない事が、私が作った魔術によってケイスケ・トウジョウがいる座標が真っ白い用紙に刻まれていく。


 あのケイスケ・トウジョウの事である。 なんだかんだ言っても私の事を忘れる事ができずに、日が経てば経つほど私と別れた寂しさから強く私の事を想い、求めるようになるに違いないと思っていた私の読みは当たったようである。


 あれだけケイスケ・トウジョウには毎日のようにアピールしまくったんだものっ! ほ、本当は凄く裸を見せるのは恥ずかしかったし、顔から火が出るかと思ったのだけれども、やって良かったと今になって思う。


「んふ…………んふふっ。 なーんだ、ケイスケもやっぱり男だったって事ねっ!! あの頃は『女性の裸? だから何ですか?』だとか『あれ? 胸をどこに忘れてきたんですか?』だとか言って、まるで私の裸には興味がないという風な態度を取っていた癖にしっかり意識していたんじゃないのよっ!! …………えへえへ、そうなんだ……意識してたんだ……っ」


 初めはパンチラ程度だったのだが、ケイスケがまるで反応しないというか私を女性扱いしなかったので、腹が立ったという事もありだんだんとアピールがエスカレートしていったのだけれども、どうやらケイスケは普通に私のアピールが効いていたと分かって嬉しくなると同時に、無性に恥ずかしくなる。


 そっかぁー……効いていたのねっ! 可愛いところがあるじゃないのっ!!


 これで私はケイスケ・トウジョウに会いに行ける。 後は用紙に記された座標までケイスケ・トウジョウがいる年代まで遡って飛ぶだけである。


「何とか空に輝く星の位置を利用して大規模な魔法陣を作れる時期を過ぎてしまう前にケイスケのいる場所と年代が分かって、本当に良かったわ……っ!!」


 そして私は一秒でも早くケイスケ・トウジョウへ会いにいく為に魔法陣の制作に取り掛かる。


 きっとケイスケ・トウジョウは、私がわざわざ会いに来てくれた事を、涙を流して喜んでくれるだろう。

 

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