第83話 だから何だと言いたい


 しかし、凶悪なスレットにテロリスト集団からの襲撃があったにも関わらず休校などせずに普通に授業を行うのには流石に、少しばかり驚いていたりする。


 というか、ワンチャン休校からの数日間休めるんじゃなかろうか? という淡い期待も無かったと言えば嘘になる。


 それと共に、こうして社畜に耐えうる精神は学生時代から鍛えられていくのだな、と変に納得してしまう自分がいるわけで、異世界にいた時代では考えられないくらいに平和になれて来ている事が自分でも分かる。


 この世界の人たちからすればスレットが現れる時点で平和もクソも無いのかも知れないのだが、俺から言わせてもらえれば魔王を倒した今、魔王の経験値も得ている訳で、この世界で現れているスレット程度は正直言って羽虫となんら変わらない。


 近くに現れたら少しだけ鬱陶しい存在。 それが俺から見たこの世界のスレットという驚異の立ち位置である。


 とりあえず、そのスレットという羽虫を、魔術師が危ない時だけ斎藤博士の研究の為に倒しに行き、報酬として少なくない金額を貰いながら自堕落な生活をして行けば良いだろう。


 この生活だと二十代前半でファイヤー(早期リタイヤ)できそうな金額が溜まる計算になるので、目下目標は二十代でファイヤーして町の外にでも魔術で家を建てて静かに暮らす事である。


 魔術師の助けがない外の世界であれば変な邪魔者も来ないだろうし、スレット程度であれば敷地内に入る事が出来ない結界を張るのも容易いしな。


 この世界は、俺にとっては余りにも平和過ぎる……。





「やっと我が家を継ぐ気になりましたか、焔さん」


 そう上から目線で母上が私に話しかけて来る。


 この、常に上から目線で私に関わってくるお母様の態度が、今までどれだけ私を苛つかせて来たのか理解できていないのだろう。


 所詮、元日本魔術師協会ナンバースリー止まりだった癖に、上から目線で偉そうに私に命令しやがって……。


 それは言い換えると、あなたの教え通りにしても日本国内でナンバースリーにしかなれないという答えではないか。


 にもかかわらずこの女は私に向かって上から目線で偉そうに講釈を垂れてくるわけで……。


「えぇ、そうね……」

「実に長い反抗期でしたが、反抗期の期間も変わらず鍛錬だけはしっかりと行っていた事は、お母さんはしっかりと見ております」


 だから何だと言いたい。


 ハッキリ言って今回の件が無ければ死んでも頭を下げなかったであろう。


 この家は私にとって家柄以外はなんのメリットも無いお荷物でしかないのだから。


 

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