第71話 撃てよ三下





 なんか麗華と大槌千里が後ろでキャットファイトをし始めたのだが、いきなり仲違いし始める理由が分からないし、今あの二人にかまっている理由も無ければ余裕もないので放っておくことにする。


 とういうか大槌千里はあんなキャラだったか?


 確かに男性である俺に対しては刺々しい態度ではあったものの、基本的にはおっとりしておりぽわぽわした雰囲気の女性であり、喋り方ももう少し緩い喋りかたであったような気がするのだが……。


「良いのか? あいつらを放っておいて」

「かまわない。 どうせお前をブッ倒して、向こうの奴もボコって終わりだしな」

「ハッ!! よく言うぜっ!! お前ごときに何ができるっていうんだよっ!! ちょっと俺たちを舐めすぎてやしないか? とりあえず同じ男であるお前には一度だけ教えてやろう。 このテロを行っているのは俺たちだけではない。 当然俺たち組織の裏には当然俺たち組織を金銭面から生活面など様々な面でバックアップしてくれている様々な組織が存在している。 その意味が分かったのならば悪い事は言わない、手を引け。 お前ひとりじゃどうしようもない程闇が深すぎる」


 そしてテロリストがいきなり真面目な表情と口調になり何を話し始めたかと思うと、どうでも良い内容ではないか。


 そもそも魔術行使用媒体を使えなくするような物を用意してきている時点でこのテロリストだけでどうこうできるようなテロ行為ではない事くらい分かりきっている事ではないか。


「なんだ、そんな事か……。 急に真面目な雰囲気で話始めるからどんな内容かと聞いてみれば、実にくだらない」

「…………そうか。 残念だ」


 そしてテロリストの男性は懐から拳銃を取り出す。


「他のメンバーはどうか知らないが、俺は常に最悪の事態を想定していてな……仲間に内緒で拳銃を持ち込んでいたんだが正解だったようだなぁ~っ!!」

「撃てよ」

「……あ?」

「撃てよ三下つってんだよ」


 この男が常に余裕がある感じであり、無駄に男性であるというだけでこの俺に情けをかけようとして来ていた理由が『拳銃を持っていたから万が一の事が起きても対処できる』という余裕からくる驕りであったようだ。


 確かに、テロ行為を行うにもかかわらず肉弾戦に固執して拳銃の一つも持ってこない方がどうかしていると俺も思うのだが、だからと言って驕っていい訳がない。


 先ほど戦った奴は刀を使ってはいたものの、どう考えても銃の方が良いに決まっているにも関わらず敢えて刀を使っていたあたり、あいつもちっぽけなプライドを捨てきれなかったのだろう。


 まぁ、だからこそこんな面倒くさい事をしてまで女性に一矢報いようとするのだろうが……。


 驕っていいのは大人が子供に手加減をするように、経験者が未経験者へ手加減をするように、圧倒的な実力の開きがあり万が一にも負けようがないと分かりきっている時だけである。

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