第33話 イライラする
「俺の勝ちだな……」
「く……っ。 ま、参りました……っ!」
そして俺は約五分間もの間麗華の猛攻を避け続けたところでどうやら麗華の魔力が尽きてしまったようである。
その麗華の首筋へ俺は片手剣に変形させた真っ黒い魔術行使用媒体の切っ先を麗華の首筋へと当て、勝利を宣言する。
「流石、東條様ですっ! 東条様専用の魔術行使用媒体を作る為にデータを集めているというのに、結局東條様に魔術行使用媒体を行使させる事ができなかったのは……流石に不甲斐なさ過ぎて自信を無くしそうだわ……っ」
そして麗華は素直に負けを認め、息を整えながら俺に魔術行使用媒体を行使させる事すらできなかったと落ち込んでいるようである。
そんな麗華の言葉を聞き、俺はこの模擬戦が俺専用の魔術行使用媒体を作る為にデータを集めているというのを忘れていた事に気付く。
「……あ、そうだった。 俺の魔術行使用媒体を作る為の模擬戦であったのに、これではデータが取れてねーじゃん」
「大丈夫よ、東條君っ!! 君の一挙手一投足はしっかりとデータで残っているからなっ!! このデータだけでもかなりの収穫と言えようっ!! いやぁー、しかし今回取れたデータを見るに流石男の子といった感じで私は興奮しているよっ!! 女性から取った平均的なデータと比べて明らかに身体能力が抜きんでているではないかっ!! 当たり前と言われれば当たり前なのだろうが、こうしてデータとして数値で現れると興奮を隠せないなっ!! どうだっ!? 東條君っ!! これから私の部屋で良い事をしないかいっ!? なに、東條君はベッドに寝っ転がって天井のシミを数えるだけで終わるからさっ!!」
「だから下ネタは止めなさいと言っているでしょうっ!!」
「何を言っているのだ中島助手よっ!! これは下ネタではなく生物として男女の関係を迫っている、歴とした繁殖行為の為のアピールではないかっ!! 下ネタと一緒にしては生命の神秘に失礼であろうっ!!」
「成人相手ならばまだしも、未成年相手にそれは普通に犯罪ですからキリっとした表情をしてもダメに決まっているでしょうっ!! なんなら下ネタよりもアウトですよっ!!」
そして、なんだかんだでデータは取れてるようなので一安心した俺は漫才を始めた二人を眺めながら今夜食べるご飯を何にしようかと考え始めるのであった。
◆
あぁ、イライラする。
それもこれもあのニュースのせいである。
日本の魔術師の不甲斐なさに呆れるのと共に、男性の癖にしゃしゃり出て来るのも腹が立つ。
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