第14話 助けるすべが見つからない
◆
ケイスケ・トウジョウがこの世界から居なくなって約二十年近くの歳月が経っていた。
人族では既に子供が大人になっている年月が経過していた。
それだけの年月が経とうとも、ケイスケと一緒に旅をしていた日々が昨日の事のように思い出せてしまうほど、ケイスケと過ごした日々は毎日が宝物であった。
そして、あの日ケイスケが元の世界へ転移した魔法陣を、私はようやっと再現する魔術を編み出したのである。
しかしながらその魔術は転移の魔術だけではなく、三十年もの時間を巻き戻す時空間の移動も含まれている為私一人での行使はどう足掻いても魔力が足りなかった。
そもそも、ケイスケが元の世界へ転移してから二十年が経っているので合わせて五十年もの歳月を巻き戻さなければならないだろう。
それこそ、もしこの魔術を扱える存在がいるとすれば神くらいではないのか? と思えてしまう程には魔力が足りなかった。
なので私は夜空に輝く星を利用することにしたのだ。
利用する方法は単純で、空に輝く星の位置を利用して大規模な魔法陣を作り、それによって作られた膨大な魔力を利用するという力業である。
デメリットがあるとすれば、この膨大な魔力を扱いきれなければ死ぬであろうし、扱いきれたとしても上手く魔術を行使することができなければ宇宙の塵となって死ぬだろう。
どちらにしても成功する確率よりも失敗する確率の方が高いとおもうのだが、ケイスケのいない世界など私にとっては死んだも同じである。
そして、エルフ族である私は残りの人生はあまりにも長すぎた。
「待っててね……ケイスケ…………ッ!」
◆
私は明らかに気を抜いていしまっていた。
いつもであれば千里のあの一撃で粉砕しており、千里の繰り出す打撃の威力を私は信頼していたというのもあった。
しかしながらこの小隊のリーダーとしてスレットが死亡しているのを見届けるまでは集中力を欠き、気を抜くなどあってはならなかったのだ。
どう考えてもリーダーである私の初歩的なミス。
そしてそのミスのせいで今、私の目の前で千里がスレットの爪によって切り裂かれようとしているのを私はただ見ている事しかできなかった。
どう考えても間に合わない。
千里を助けるすべが見つからない。
今になって私の集中力は研ぎ澄まされ、時間がスローモーションのように見えるのだが、だからと言って動きがその分早くなる訳ではない。
私はただ、目の前で殺される学友を見る事しかできない。
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