第3話路傍の石

 コーヒーなんて昔は砂糖とミルクが無いと飲めなかったのだが、今では身体が無意識に甘みを避けており、むしろ苦ければ苦いほど濃ければ濃いほど良いとさえ思えてくる。


 そして通学路を歩いて行き、学園が近づいて来ると女性の数が圧倒的に多くなってくる。


 というのもこの世界では男性は単純な腕力が女性よりも強いのだが、魔力に関しては女性の方が圧倒的に多いのである。


 勿論男性でも魔力は持っており、日常生活で魔力を必要とする魔術アイテムなどは使えたりするのだが基本的には女性の半分以下の魔力量が平均値とされている。


 そして今俺が通っている学園なのだが東京魔術大学附属魔術技術高等学園、通称東京魔術学園なのだが先に述べたように当然女生徒が圧倒的に多く、学生全体の九割以上が女性という数値になっていた。


 そもそも何故俺が男であるにも拘らずこの東京魔術学園に通う事を選んだのかというと、学費が無料だから、ただそれだけである。


 両親はちゃんとした普通科のある高校に行かせたかったみたいなのだが、当時の俺は行きたい高校もなければ特段成りたい仕事も趣味もない。


 唯一俺の特徴をあげるとすれば男性にしては珍しく魔力量が少しばかり多いということぐらいである。


 と言っても所詮は男性の中では魔力量が多いというだけで、やはり女性と比べた場合よくて中の上くらいだろう。


 それも普段から魔術の訓練をしていない一般人女性と比べればの話である。


 それは当然ここ東京魔術学園内で比べれば下の下である。


 しかしながら、そんな別段個性と呼べるかも怪しいような俺の個性なのだが東京魔術学園では、男性の場合Fランク以上の魔力量と魔術技術、いわゆる魔術師ランクがFランク以上あれば学費が免除という特別枠があり『どうせならここにしよう。 それに学費が浮く分少しばかり早い親孝行だしな』などと考えて(もはやこれは考えていないという部類なのだが)決めた高校であった。


 ちなみにそれとは別に下心が八割であったのは親には内緒である。


 そして俺はそんな良い加減な理由で選んだ高校を入学して一週間もしないうちに後悔したもんだと懐かしむ。


 当初こそ男性比率の低いこの学園に入ればモテモテのキャンパスライフを過ごせるものと思っていたのだが、現実はそう甘くはなかった。


 そもそも今期の男性入学生が俺一人であり、そして魔術師志望の女性たちは基本的に男性をかなり見下していた。


 そして見下した上で俺の事は居ないものと言った方が正しいのかもしれない。


 当然味方などいるはずもなく、ただ、路傍の石のごとく過ごす日々。

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