第85話 元世界一位の知られざる戦い

「ワンマンコマンドー…テメェを殺してやる。」

 嘗ての部下だったヒーローはヴィランとなり、俺の乗る飛行機をジャックした。

「来いよヴェネト…銃なんか棄てて掛かってこい。(中略)…怖いのか?」

「誰がテメェなんか!!…テメェなんか怖くねぇ!!」

 そう叫びヴェネトは能力を使い透明になる。

「ヤロウぶっ殺してやらぁっーーー!!」

 透明となったヴェネトの位置を予測し拳を振るう。

「グゥ!!」

 的確に入った拳。しかし、全盛期から遥かに劣るその威力では仕留めることは出来なかった。

「くっ…」

 反撃に転じたヴェネトの拳が俺を襲う。

 背中に顔面、数発の拳。

「歳をとったなワンマンコマンドー、テメェは老いぼれだ。」

 執拗な攻撃に耐える。

「気分いいぜ、昔を思い出すな、これから死ぬ気分はどうだ!」

 嬉々としながら振るわれる拳。

「ふざけやがって!!」

 身を反転し奴の顔面に振るう拳。そこから続いて数発の拳を振るう。

「うぅぅ…」

 吹っ飛んだヴェネトはよろめきながら立ち上げる。

「地獄に墜ちろヴェネト!!」

 俺は飛行機の扉を剥がし、それを投げつけた。

「うぁぁあ!!」

 ヴェネトの悲鳴。

 気絶した奴は飛行機の開いた扉、気圧により吸い込まれ堕ちていく。

 

「まもなく墜落します!!私は脱出しますので、あとは任せましたよなぁワンマンコマンドー!び」

 パイロットの声が響いた。

「おい、パイロット!!」

 外を見ると開くパラシュートが見える。畜生、あいつ自分だけ脱出しやがった。

 急いでコクピットに向かう。扉を破壊し、

「動けこのポンコツが!動けってんだよ!!」

 俺は計器をぶん殴った。


 息を吹き返した飛行機は、再び高度を上げる。

「この手に限る。」

 しかし、それも一瞬。飛行機は勢いよく高度を下げる。

 海上に墜ちた飛行機。

 なんとか脱出した俺は、飛行機の破片にしがみつき、太平洋を彷徨うことになった。



−−−−−−−−−−−−−−−−−



「舞風ちゃん…お父さんカツアゲするのはやめよ…マジで…」

 そう呟く父、紅雪。

 唐突に武生院に乗り込んできた腹違いの妹は、父親をカツアゲし、小遣いを巻き上げていた。


「神也兄、久しぶりじゃね、相変わらずじゃのぉ。」

 ケケケ、と笑い紙幣を数えながら僕に言う妹。

「舞風こそ相変わらずで…」

 姉程手に負えないわけではないが、姉以上に破天荒な妹に僕は疲れた顔で言う。

「んで、神也兄、誰じゃそいつぁ?」

 僕の背に抱き着く人物を指して舞風は聞く。


「アイギス・シュバリエ…いえ、武生アイギス、神也さんのお嫁さんです!!」

 そう答える変女に、舞風は疑わしい目を向け、僕は武生の技を使い彼女を振り落とした。


「神也兄…」

「ごめん…今は何も言わないで…」

 人生で初めて妹から心配された。








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