第13話 イメージは大事
授業参観が終わり、ママと一緒に家に帰る。
「氷華、よく出来ていた。」
上機嫌で頭を撫でるママ。
「うん。」
ママに褒められるのは凄く嬉しい。ママはもの凄く怖いけど、大好きだ。
手を繋ぎ、仲良く帰る。
「ママ?パパとママがプロレスごっこするのってダメなことなの?」
家族からやり直しを命じられた作文は、みんなの手助けもあり、ママに褒められるものになったけど、いまいち納得出来ていない。
「ママ?」
全く答えが返って来ず、不安になってママの顔を見上げる。
「み…見たのか?」
真っ赤な顔で泣きそうになっているママ。
「うん。」
初めて見るママの顔に、少し戸惑いながら返事をする。
「忘れろ!!いいな!!絶対に忘れろ!!お前にはまだ早い!!」
凄い剣幕でそう言うと、私を抱え上げて大空を走る。
「あ、鳥さん。」
ママに抱えられ、大空から街を見下ろす。いつもとは違う風景が面白い。
「絶対に他所で言うなよ!!」
更に念押しされた。
結局、2人が何をしていたのか、ママがなんであんなに赤くなっているのか、分からないままだった。
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「気を付けよう。これから…」
枕に顔を埋め、真っ赤になっている妻にそう声を掛ける。
「手遅れだ!!明日から、『百道さんはお盛んねぇ〜』なんて指さされるんだぞ!!」
街中で放たれた娘の言葉は、予想以上のダメージを負わせたらしい。
「清楚な私のイメージがぁ~…」
枕を濡らす神娘。
「大丈夫だと思うけど…」
そもそも、そんなイメージは誰も持っていないと思う。
毎朝聞こえるドスの効いた怒声や、指先一つで怪獣も怪人も、ヴィランもヒーローもダウンさせる百道の奥様をご近所さんは知っているし、清楚なのは見た目だけだと周知の事実なのだから。
「奥様ネットワークを甘く見るな!!」
そのネットワークから弾かれた人がそんなことを言った。
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「お前んちっていいよな。」
昼休み、そんなことを光に向かって言うクラスメイト。
そんな言葉に、俺以外がうんうんと頷く。
「ただのプリン屋だぜ?」
俺は、一応父がヒーローであることを完全に忘れていた。
「それは別にどうでもいいよ!!俺たちだって、流石にプリンを羨ましく思う小学生じゃねぇよ!!」
そう言うが、あまり大差ないと思う。
「街でも有名な百道の美人姉妹が妹で、おまけにあの母ちゃんだろ!!」
そう言うこいつらは、その母ちゃんがどんなに恐ろしいのかを知らないのだろう。
仮に知っていてそう言えるのなら、どこか頭がおかしいと思う。
「確かに、俺の妹は世界一可愛いが…あのババアがそんなに羨ましいか?」
凛樹も氷華も世界一可愛い。仮に世界で一番可愛い妹を決める大会があれば、文句無しに2人とも同時優勝だ。
しかし、恐怖の権化たる母は母でしかない。
「持てる者の余裕は違うねぇ…」
そう恨み深く言う奴ら。
「百道の奥さんと言えば、美人で何時までも若い!!街内の旦那の憧れだぞ!!」
「和風清楚な美人!!」
「それでいて色気を感じさせる蠱惑の表情!!」
「「「そして何より、おっぱいが大きい!!」」」
そう拳を握り力説する奴らを冷めた目で見る。
「オメェらの趣味はよく分かった…要件はなんだ?」
大きく溜息を吐き、そう聞く。
「友だちとして家に遊びに行かせて下さい!!」
そう頭を下げる連中。
「見返りは?」
そう、交渉には対価が必要だ。
「凛樹ちゃんと仲直りするシナリオがあります。」
「よし、今日から俺たちは友だちだ。」
男の友情が結ばれた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
「百道って、将来有望だし、顔も悪くないけど…」
トップヒーローの確約に加え、高身長で顔立ちも悪くない光だが…
「「「アレはないわ~…」」」
クラスの女子はそんな結論を出していた。
光は、極度のシスコンにより、人生最大のモテ期を自ら潰していた。
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