第13話 聖龍とご対面!!!!!!
召喚されて、魔力測定も順調だったのに、いざ魔法を使うとなった時に、私は使い方が分からなかった。ミュゼァの教えてくれた力が体を巡る感覚は何となく理解できたけど、それを体の外に放出するとなると、分からなかった。
何かが体の中で巡っているのを感じるのに、それだけで、モゾモゾしている感じがする。
「美麗様、ミュゼァ様が来ていますがどうしますか?」
私の事を心配してか、研究所に行ってから、一週間が過ぎても力が使いこなせない私の元に毎日のように足を運んでくれている。
「うぅ、そろそろ呆れられるかもしれない」
私はいつもの居間で、午前の自主訓練の成果に嘆いていた。
「そんなに落ち込むなって何度言ったら分かるんだ」
「ミュゼァ様!?」
私は寝転がっていたソファから起き上がり、ララも慌てて、姿を消す。
「魔力の使い方が分からないんだよな」
「ごめんなさい」
クッションに抱き着く。前聖女の息子だもの、私の出来の悪さを比較して嘆いているのは彼自身だと思うの。
「私本当は聖女様じゃなかったのかな」
「それはあり得ない。紋様が出ているのが証拠だ」
チラリと私の胸元に視線を動かす。普段は紋様が見えにくいドレスを選んできていた。
「魔力の無い世界で生活をしていたんだ。直ぐに使えるようになるとは、思っていない」
ミュゼァはそういうと、「座っていいか」と許可を取りながら私の向かいに腰を下ろす。タイミング良くララが紅茶セットを持ってやってきた。
「はい」
「俺が魔力を流しても成果が無いから、そろそろ聖龍に会いに行くか」
「いいんですか」
この国を守護する聖龍に会う事が許されるだなんて。用意された紅茶を一口飲んでから、ミュゼァはどこか楽しそうに言った。
「会いに行ったとして、聖龍が会ってくれるかは、賭けだけど。母さんの時に滅茶苦茶ビビらせてたからもしかしたら“聖女は怖い人”って思ってないと良いけど」
「私を慰めようとしてるの?笑いたいの?」
「事実を言ったまで。母さんが歴代最強なのは、ミークに教わってるだろ?」
国の歴史を教わっているところで、話題に出るとミークはいつも嬉しそうに話してくれる。「聖女として働いていて、気が付いたら子供を産んでいて。父親に関しては一言も話してくれなかったんじゃ」と。ミュゼァは自分の父親の事を知っているのかな。
「すごく良くしていただいています。だから、早く聖女のお勤めをしてくて」
「自分を責めない。元々勝手にこちらから呼び寄せたんだ。美麗様は悪くない」
そう言うとミュゼァはララに耳打ちをする。
「今から聖龍に会いに行く。ミークにだけ言伝を頼む」
「では、わたくしもご一緒しますわ」
「それは出来ない」
立ち上がるミュゼァの周りに魔法陣が浮かび上がる。
いつもは無詠唱でいきなりの異動なのに今回は、移動を見せつけるように見えた。
「ララからは殺気が感じられる」
私の隣に立つと、魔法陣が光り出す。
「何を言っているんですか、ミュゼァ様といえど、私はちゃんと隠せています」
「隠せていないから言っているんだ。聖獣は人よりも感性が敏感なんだ」
パァァァっと光出す魔法陣に足元から姿が解けていく。
咄嗟にミュゼァに抱き着くと、にやりと笑う。
「今回は聖域に行くのでいつもの移動魔法とはちょっと違いまして。驚かれているかもしれませんが、一瞬で着くのは変わりません」
と、言い終わらないうちに目の前が一瞬光ったかと思ったら、景色が何処までも続く森の中に変わっていた。
「はい、到着いたしました。今代の聖女様。ここが聖龍が住まう土地でございます」
案内された場所には、清らかな空気と少しだけの瘴気の塊を感じる。
「聖龍の居場所ですが、多分その黒いモヤモヤですよ」
「何も言っていないのに、なんで分かるのよ」
「俺も瘴気は分かりますから。母さんに付いて行ってたので耐性もありますし、弱めることはできます」
「聖女と聖獣にしか払えないんじゃ」
「払えませんよ。ただし、弱めることはできます。でなきゃ、人間はとっくの昔に滅んでいますよ」
笑って話すところではない気がするけど、どこか楽しそうなミュゼァ。お母様がやっていたことを出来ない私の事を呆れているんじゃないかな。
「不安そうな顔しないでください。前聖女が聖獣に好かれなかった理由は、単純に人に慣れていない聖獣を困らせた母さんが悪いんですから」
迷いなく歩き出すミュゼァの後ろをついていく様に私も歩き出す。清らかな森の中に一つだけある、靄の中心部へ向かっている感じ。
「別に俺はあんまり気にしてないんですけど、母さん割と戦闘狂なところがあって。母さんが就任前に聖龍が代替わりして、まだ子供だった聖龍に負担をかけまいと母さんは、命を削って国を護っていたんです」
「ごめんなさい」
辛い話をさせてしまった。ミークはその辺の話をしてくれなかった。前聖女はやんちゃだった見たいなことしか教えてくれていない。遠慮しているのか、尊敬から詳しく話せないのか、分からなかった。
「別に、事実だから。美麗様が聖女として来たからには守る」
クルリと振り返ったミュゼァの瞳が真剣なもので、私はどうしていいのか分からなくなってしまった。
力が使えていないのに必要としてくれているのなら、期待に応えないと。
「出来損ないなのに」
「聖女が居るだけで結界は少し落ち着いた。生まれたての赤子が魔法が使えないのと同じ。ただ、美麗様には至急魔法を使えるようになってもらう必要があったから、聖魔法の使い手である、聖獣・この国の護り龍に力を貸してもらおうと思ったんだ」
「ちなみに、私が来る事は」
「言っていない。聖龍の聖女に対するイメージが母さんだからきっと驚いて逃げるから、直接会ってほしくて」
歩き始めると、ミュゼァは沈黙になった。焦っても何も良い事が無いけど、至急って、私に教えている以上に国は不味い状況なのかしら。
「着いたぞ」
五分くらい森の中を歩いいていた。獣道が合ったけど、動物には会わなかった。
案内された場所は大きな木の根元で寝ている、銀色の龍。大きさは一軒家くらいだろうか。
「聖龍様、突然の訪問申し訳ありません」
聖龍に臆することなくミュゼァは寝ている龍の元に近づいていく。私は途中で足を止めると。「くわぁぁぁ」と見た目に似合わない幼子の様な声で目をぱちくりさせている。
「君は、あの、えっと」
立ち上がると、想像以上の大きさで、ミュゼァはその足元に踏まれるんじゃないかと思いながらも跪く。
「今代の聖女を連れてきました。聖龍様のお力をお借りしたく」
「君が新しい聖女様?」
聖龍が私の方に顔を向けてくる。淑女の礼を習っているはずなのに、咄嗟に動けなくて、私は軽く会釈をした。
「初めまして」
ミュゼァを踏まない様にして私の目の前に進んできた聖龍は不思議そうに首を傾げる。
「魔力の色が違う」
「美麗様は元々違う世界に居ました」
魔力には色もあるのか、と感心している私とは反対に、聖龍の声が堅くなる。
「違う世界から連れてきたの」
「はい、この世界に聖女が生まれなかったのと、前聖女からの遺言に予言に近い形で書かれていたので。これから起こるかもしれない問題に備えて」
大きな聖龍の瞳が悲しそうに細められた。
「君は家族とはもう会えないの?」
「そうですね」
これから頑張ろうと思っていた矢先に来てしまったのは、少しだけ後悔しているけど。だから、此処で捨てられたら私はどうすればいいか分からない。必要としてくれているから、頑張りたいのに、魔法が使えないなんて、情けなさすぎる。
「分かった。ボクの主人として君を認めるよ、宜しくね、異世界から来た聖女様」
パクリと、聖龍に気が付けば飲み込まれていた。
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