第8話 光り輝く水晶玉と、私の魔力

 そう言えば2人は何歳くらい何だろうか。同じ年位かなと思うけど、もしかしたら思っているよりも年上かもしれない。


 日本と見た目年齢が違うのはセオリーだもんね。その辺りの予習はちゃんとしてるもの。惑わせれないわ。


「そんなに見つめて、何?」


 他に誰も居ないからか、その笑顔に胸がギュッとなる。


 美形の柔和な笑顔は反則です。男性の免疫無いから、余計に胸に突き刺さるんですけど?


「幾つくらいなのかなって思っただけです」


「あぁ、年齢?俺は26歳。ちなみに君は?」


「女性に年齢聞くなんて、失礼じゃない?」


「これからの聖女様の事を考えると知らなくちゃいけないことも多いので理解してください」


「ぬぐぅ、24、よ」


 私よりも肌が綺麗な気がする。私の答えに、ミュゼァは、へぇーと息を漏らした。


「前に来ていた賢者は、多分美麗様と同じ世界からですけど、老けて見えましたが、同じ世界でも若く見えるかどうかは違うんですね」


「喧嘩売ってます?」


 一応美容は気にしていたつもりだった。バイトをして自由に使えるお金を増やして、夢の華々しいOL人生を歩むつもりだったのに。


 来たからには頑張るけど、気持ちの整理か簡単に出来るほど、就活の時の努力を無駄にしたくないのに。

 あの時手に入れた対人スキルとか、どこかで役に立たせたい。

 ミュゼァは私が怒ったと思ったみたいだった。


「いや、そうじゃなくて、可愛いなって」


 イケメンに顔面を褒められたことがない、私は、どう反応するのが一番正しいのか分からなくなって、頭の中が空っぽになってしまった。 


「可愛いッ、て、ちょっと揶揄うのはやめなさいよ」


「女性の容姿に関して嘘は言ってはいけないと育てられました」


 前聖女様、息子さんのことどんな感じで育ててるんですか。恥ずかしくなり顔を両手で覆う。


「美麗様は笑顔がよく似合う」


「何よ」


「召喚されてからずっと仏頂面だったので、笑わない人なのかなって」


「突然で、緊張してたのよ」


「大丈夫、俺が貴方を守ります。邪気だけは払ってもらわないといけないですけど」


 多分私はミュゼァに頭が上がらない。

 守ってくれると、言われたから絆されたのかもしれない。

 だって、こんなイケメンに守る宣言されるの、初めてなんだもの、ドキドキしないわけないわよね?

 考え事をしていたら、いつの間にか次の目的地に到着していた。




 召喚された場所とは違う、凛とした雰囲気の場所には、誰もいなかった。

 ミュゼァは慣れた足取りで入り口のない建物に向かって歩いていく。壁にぶつかると思って足を止める私にミュゼァはどこか楽しげに笑った。


「どうかしましたか」


「そのまま行ったらぶつかります」


「俺がそんなヘマするように見えますか」


 そう言うと、壁に向かって腕を伸ばすと、壁にすり抜けて、手が見えなくなってしまった。


「ちょっと、どんな手品使ってるんですか!?!」


「手品も何も、魔法が掛かっている場所なんだ。聖なる場所、他国からもし戦争で攻め入られても簡単に折れない為の布石。聖龍が住んでいる場所に繋がっている空間とも言われている場所だからな」


「そうなんですか」


 私はミュゼァにの隣に急いで行く。


 瞬間移動でもしているのか、気が付けば水晶玉が一つ浮いているだけの空間にたどりついた。


 ミュゼァは、その水晶玉を指さした。


「儀式の時以外は基本的に無人な場所であって、国を守護する聖龍の魔力の込められた水晶が、魔力を測定する。美麗様は聖女の紋様が出ているから、初めてリンクして何かが起こるかもしれない」


「何かってなに!?」


 不安を煽るような言葉に、綺麗な水晶玉が光輝く。


「勝手に光り出してるんですけど」


「それでは聖女様の力を見せてもらいますか」


 楽し気に言い切るミュゼァ、私は光り出した水晶玉に近づいて行った。






 光出した水晶玉の向こう側に大きな竜の様な存在が居るような気がしてしまう。恐る恐る近づくにつれて、更に光が増していく。


「どうしてこうなっちゃうのよ」


 ただ、自分の力を知りたかっただけなのに、後ろに居るミュゼァがとても楽しそうにしているのが、何となく伝わってくる。


 私は眩いばかりの光に目を細めながら、水晶玉に手を添え、魔力を注入する。

 ただ、光を放っていただけの水晶玉が一転、七色に光り輝いた。


「全属性包囲とか、ありえないだろ」


 後ろからミュゼァの声が聞こえる。嬉しさと、驚きが含まれている気がした。


「これってどうすればいいんですか」


 ミラーボールの様に光を輝き続ける水晶玉に、触れている場所が温かい。水晶玉の後ろに居る気がした竜の気配が私のことを温かく包み込んでくれているように感じた。


「そのまま話して大丈夫です」


 言われた通りに、水晶玉から手を離し、ミュゼァの元に戻ると、ブツブツ呟いている。


「聖女の儀式が行われたのは他国の魔導士達も気が付いたとしても、美麗様の能力についてはまだ伝達しない方がいいかもしれないな。早く知らせないと」


「何か問題がありましたか」


「いずれ知ることになるから先に伝えておくが、魔法の力で、全方位抑えているのが稀なんだ。異界からくると、時空を超えるからか、現地の人間よりも力が強いことは多いんだが、美麗様の魔力量は予想をはるかに超えている。力の使い方が分からないうちに闇雲に使わないことを約束して欲しい」


「分かったわ」


 力が強いと言う言事は、何かあった時に、逃げ切れる、切り札になると考えてていいのかな。まずは力をちゃんと使えるようにならないと、自分の身も守れない。


「美礼様、召喚してすぐに、魔力測定まで付き合って貰って助かった。後は、ゆっくり休んでもらっていい。詳しいことが決まったらお知らせします」


 そう言って召喚初日にして、私は「聖女」と「桁違いな魔力量」ということを知ることになった。

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