第435話 閑話──見える世界
本編とは関係ない閑話で御座います^^
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私は産まれながらに他人とは見える世界が違っているらしい。
らしい、というのは私は他の人が見ているこの世界を見る事が出来ない為『違う』と言われても何がどう違うのかわからない。
ただ分かった事は、私はどうやら『赤』という色が見えないらしいという事と、その事で悪魔付きと親に不気味がられて奴隷として捨て値で売り飛ばされた事である。
こんな事になるのならば画家になりたいなどと言わなければ良かった。
大それた夢など口にしなければ今も私は『赤色』が見えないという事も分からずに日常を過ごせていたのに。
そして私の売り先は所謂性奴隷であると聞かされた時は嫌で仕方なかった。
しかし『赤色』が見えないというだけで買う人が一向に現れず、初めは化粧をすれば何とか美人の仲間入りが出来る容姿とこの無駄に整ったプロポーション、そして駄目押しの処女という事で高値で売り出されて居たのだが日に日に売値が下がっていく現実にいつしか私は、あんなに嫌がっていた性奴隷ですら買ってもらえる人が現れる事を望み始めていた。
もし現れたのならば、こんな私にも価値があるんだって思えるのだから。
奴隷に落とされる前では、心の奥底では見下していた娼婦が今では羨ましくて仕方ない。
そして今日も私を買ってくれる人は現れなかった。
まるで『お前には価値が無いのだ』と言われているようで。
翌日、奴隷商人の方が興奮気味に私の前まで来る。
奴隷商人曰く、明日到着する帝国には欠損奴隷でも買い取る者好きがいるらしく、しかもそこは奴隷の負った傷や不治の病を治してしまう神のみ技の使いが所属しているらしい。
だからか。
と、私は思った。
この奴隷商人は売れる見込みの無い訳有りの者達も仕入れていたのか、と。
しかし例え売れてもお金にあまりならないのに何故?と疑問に思い奴隷商人へ問うてみる。
すると奴隷商人は「確かに、訳有りの者を仕入れて稼ぎになるかと言うとならない。だが、救える可能性があるのならば救ってやりたい。少なくとも俺の所に売られた者達だけでも」とぎこちない笑みでそう答え私の頭を撫でた。
もしかしたら奴隷商人は奴隷商人で悩んでいるのかもしれない。
他人には理解されない職業、犯罪者だと罵られるがある事も私は知っている。
私と一緒だと思った。
そう思うと私は申し訳無さで涙が止まらなくなった。
奴隷商人曰く、帝国で訳有り奴隷を購入している所は『外傷と病を治す』と言ったのだ。
しかし、私の目は病気では無い。
それは自分自身が良くわかる。
身長が人によって違うように、魔力量が人によって違う様に、私は人と見える世界が少しだけ違うだけである。
私は産まれて初めて神を心に中で罵倒した。
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