第382話 メイド奴隷達は剣を捧げる

「どうしました?フラン様」

「い、いえ、すこし考え事をしておりました。しかしながら私を様付けで呼ぶ必要はございませんわよ?オズウェル様」

「そんな、フラン様はかの有名な仮面の秘密結社のトップであるおかた。たかが一貴族でしかない私ごときには恐れ多く────」

「────わ、わたくしは仮面の秘密結社など知りませんわっ!!」

「大丈夫でございますフラン様。私はフラン様を裏切る真似は決していたしません。故にフラン様に忠誠を誓うべく剣を捧げたく思います」


そういうとオズウェルはナプキンで優雅に口を拭うと、優雅に席を立ち、優雅にわたくしの元へと歩んでくると優雅に腰へ携えていた剣を抜くと、優雅にその剣の柄をわたくしへと向けて来た。


流石隠しキャラとも言えど攻略キャラクターである。


あふれ出る優雅さに思わずときめいてしまいそうになるのをぐっと堪える事で精いっぱいである。


「な、ななな、何をっ!?」

「我が主へ忠誠を」


その光景はまるで神話の一ページであるかの如く美しいと感激しながらアンナはどこからともなく取り出した魔道具でこの光景をパシャリパシャリと切り取って行く。


そして切り取って行くにつれアンナは興奮を隠しきれず息が荒くなっていくのだが、いまのフランにはそんな事など気付ける余裕は皆無である。


「あ、貴方は剣を捧げるという事がどういう事なのかお分かりなのですかっ!?」

「もちろんでございます」


『剣を捧げる』言葉だけ聞くと家臣の忠義を推し量れるような行為、または似たような何かと思ってしまうのだがこの世界は剣と魔法の世界であり奴隷契約もできる世界なのである。


『剣を捧げる』という言葉でごまかしてはいるのだが、その実は種類の違う奴隷契約の様なものなのである。


故に、尊いものとしてこの世界では扱われている。


そしてこの二つの違いは、細かな部分で見れば何箇所かあるのだが、一番の違いは本人が望んでなるか望まずになるかという部分である。


その部分だけを見れば私の元へ来た新しいメイド奴隷達は剣を捧げる、いわゆる忠誠の儀を行ったようなものなのであろう。


しかし、奴隷を希望した経緯から見て彼女達のは忠義と言うよりかは餌に群がる動物のように感じてしまうのは致し方ないだろう。


「う………っ」


そして、目の前には膝を折り優雅にたたずむオズウェルの姿が目に入ってくる。


剣を捧げるが故に私を見つめてくる真剣な表情に思わずときめきそうになる。


「お受け下さい。我が主人よ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る