第379話 無表情を貫く

あんな会話を毎日毎日聞かされているこっちの身にもなって欲しい。


そのせいで一目で良いから見させてほしいという欲求が日に日に増していっているのだ。


精神攻撃よりも体罰の方が嫌だと昔は思っていたのだけれど、今なら分かる。


体罰よりも精神攻撃の方が耐えられないと。


虐殺などとは違い体罰であるのならば捕まえた者が死なない様に粗悪品であったとしてもポーションを使用されて死なない程度には身体の受けたダメージを回復してくれるのだが、精神に受けたダメージはポーションでは回復しないのである。


これぞ正に心休まる日が無い、無限地獄である。


そして私は誓う。


いつかエルフに復讐をし、そして今まで私のお兄様へ行ってきた事を私の目の前で行ってもらうと。


プライドの高いエルフにとってその行為を見下している人間、しかも女性に見られるなど屈辱の極みであろう。


想像するだけでまた新たな扉が自分の中で開きそうになる事に気付けないまま、今日も私は妄想に耽るのであった。






ドミナリア家のメイド三名をわたくしの奴隷へと落として早三か月が経った。


いくら領地内でも比較的過ごしやすい土地に家を建てているといっても初夏の暑さには敵う訳もなく強い日差しと共に気温もぐんぐんと上がり


「フランお嬢様、何か欲しい物は無いですか?私ができる範囲でご用意させて頂きます。それこそ、私の身体が欲しいという事であれば────」

「フランお嬢様、どこか身体に疲れが溜まってないですか?申して頂ければ私が全身くまなく素手でマッサージして差し上げ────」

「フランお嬢様、何か食べたい物はございませんか?もしあるのでしたら私が例えその食材がこの世の果てにしかない食材であったとしてもこの身一つで必ずや────」

「ちょ、ちょっと邪魔しないでくださいっ!」

「何よっ!私が初めにフランお嬢様とお話していたのに横から入って来ないで頂戴っ!」

「むしろあなた達こそが私の邪魔なんですけどっ!」


その三名はというと、まるで構って欲しい犬の様にわたくしの周りをべったりとくっついて、三つ巴にお互いを牽制しつつくるくるとわたくしの周りを回っている。


「「「フランお嬢様っ!」」」


そんな彼女達はどちらの言い分が正しいか決着をつけるべくわたくしの前で上目使いで見つめてくる。


その愛くるしい三名に思わず口元がにやけてしまいそうになるのだが、ここはドミナリア家である為グッと堪え無表情を貫く。


「どきなさい。奴隷のくせにわたくしの行く手を阻むなんて、お仕置きされたいのかしら」


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