第376話 解せぬ。
「しかし、こうもお転婆だと嫁の貰い手がいないと嘆かなければならない所であったが、第二王子であるノア様には悪いが何とかその心配はしなくてよさそうですね!!まぁ、せいぜい婚約破棄されない様に気を付けるんですよ、我が妹よ」
「だが調教師として生きては行けるであろうから万が一婚約破棄されたとしても金銭面に関しては悩まなくて済むなっ!!」
そしてわたくしのお父様とお兄様が実に楽しそうに笑いながらわたくしの事を話し出し、お父様に至っては大口を開けて「ガハハハッ」と笑い出す始末である。
その内容はまるでこのわたくしは、ノア様の婚約を破棄されてしまったら貰い手がなくなって余生を一人寂しく過ごす羽目になってしまうという内容である。
解せぬ。
そもそも可愛い娘ないし妹を捕まえて「お前なんか結婚できない」と言って笑う等言語道断であるのだが、これ程までに美しく可憐であると自画自賛しているわたくしが結婚できない等あるはずがない。
そこまで思った所でわたくしは気付いてしまう。
そうこれはあくまでもジョークであり冗談であるのだと。
わたくし程の女性相手だからこそ成り立つ笑い話であるという事に。
あぁ、美しいというのは罪なのですね。
オホホホホホホホッ!!
「何でフランまで一緒になって笑っていられるのですかっ!笑い話ではないですのよっ!鈍い鈍いと思っていたのだけれども私の娘がここまで鈍感であったなんて………いいですか、フラン。お父様やお兄様が仰っております通り、ノア様に婚約破棄されると本っっっ当に結婚相手が見つからないのかもしれませんのよっ!少しは危機感という物を持ってはいかがかしら?フランさん。このままでは花嫁修業に費やすお時間を増やすかどうか考えなければならないかもしれませんわ」
そこまで言うとお母様は深いため息を吐く。
そしてわたくしは、都合の悪い言葉は全て右耳から左耳へと通り過ぎて行くのであった。
真実というのは時に気付かないからこそ幸せである場合もあるのだ。
最悪、お母様やお父様、そしてお兄様がおっしゃる通りの未来が待ち受けていたとしても、その時にわたくしの『本気』をお見せして差し上げようではないか。
◆
「ケホッケホッ!………」
あのエルフの野郎に蹴られたお腹がじくじくと鈍い痛みとなって私を襲ってくる。
ポーションを使ったといっても元々効果の薄い低級のポーションである上に、更にその低級ポーションの粗悪品である。
生きているというだけで有難い。
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