第296話 頭が固いにも程がある

頭が固いにも程があるであろう。


二千年以上生きて脳味噌にカビ処か苔が生えているんじゃなかろうか?いや、間違い無く生えているだろう。


でなければ、まるでエルフよりも人間の方が尊い等という様な表現はしない筈である。


エルフこそが至高であり祖であり全であり頂点であるのが、同じエルフとして何故分からないのか理解に苦しむ。


しかし、この忸怩たる思いもあと少しで報われると思うと、そしてその来るべき時、長老達の表情を想像するだけで私は気持ちが高揚してくるのが分かる。


もう少し、もう少しである。


そして私はその想像を実現させる為に今日も行動に移すのであった。





「ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!直様片付けさせて頂きますっ!」


適当にしているつもりなどなかった。


むしろ集中して料理を運んでいた。


しかしながら、だからこそ視野が狭まってしまい足元にまで注意が向かなかったのも確かである。


その結果が今、私の運んで来た料理を頭から被ったフラン様の姿として目に前に現れてしまう。


必死にそのミスを取り返そうとするものの奥方様にピシャッと断られてしまい私は一気に青ざめてしまう。


「………お母様」

「はい、何でしょうか?フランさん。言いたい事は分かりますが一応聞いておきましょう」


そしてフランお嬢様と奥方様の冷めた声がシンと静まった部屋に響き渡る。


「あ……あのっ、その…っ、私には病気の妹が───」

「お黙りなさい。まさか、今この場で下民が喋って良いとでもお思いでは………無いですわよね?」


そんな張り詰めた空気の中、緊張と恐怖で体が震えていう事を効かない身体に鞭を打ち一度絞った雑巾を再度絞り水出すかのように絞り出した声でどうにか妹だけはと訴えかけようとするも、その私の声はフランお嬢様によってかき消されてしまう。


もし、このままアンナの様に奴隷にされた場合残された妹はどう生きて行けば良いのか。


私の処遇なんかよりも残した妹の事が気掛かりで仕方がない。


お給金が良いからと目先の金欲しさにここで働こう等と私が思わなければこんな事にはならなかったのでは無いか?

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