第286話 閑話──高段位魔術の呪文──
───閑話───
【注意】
本編の続きではありません。
「すみません、ショートソイオールミルクアドリストレットショットノンシロップチョコレートソースアドホイップフルリーフチャイラテを一つ下さい」
「あ、私はトールバニラノンファットアドリストレットショットチョコレートソースエクストラホイップコーヒージェリーアンドクリーミーバニラフラペチーノでお願いします」
「はい、かしこまりました。それではご注文を繰り返させて頂きます。ショートソイオールミルクアドリストレットショットノンシロップチョコレートソースアドホイップフルリーフチャイラテがお一つと、トールバニラノンファットアドリストレットショットチョコレートソースエクストラホイップコーヒージェリーアンドクリーミーバニラフラペチーノがお一つでよろしかったでしょうか?」
「「はい」」
「かしこまりました。それでは今しばらくお待ちくださいませ」
一体何の高段位魔術の呪文だよと言いたくなる様な商品名を 私は噛まずに繰り返し確認を取るとそれを厨房へとオーダーを通しに行く。
この呪文を全て覚えるまでに一ヶ月、更に噛まずに復唱出来るまでに一ヶ月も費やし、今では噛まずにスラスラと言える様になった。
それは半年前の私からは想像もつかない未来の姿であった。
例え今の私が過去の私に半年後は今巷でお洒落の最先端の一角である喫茶店で女給───この喫茶店ではウェイターと言う───として働いているなどと言っても決して信じやしないであろう事など様に想像出来てしまう。
それほどまでに半年前の私と今の私は見た目も環境もその全てが様変わりしていた。
半年前の私、ミリーは一般的な麦農家、そこの7人兄妹の末娘として産まれた。
暮らしこそ貧しくはあったものの末娘にしては愛情持って育てて頂いた方であると思える程には両親、そして兄妹たちからは愛情を持って育てて頂いたと思う。
農家の娘、それも末娘となると力仕事である本業を手伝える訳もなく、かと言って良縁を結べる程の存在でもない、ただの穀粒しと産まれた直後に奴隷商人に売り飛ばされるという話も珍しくない。
ただ、私の家系が麦の農家だったのも幸いし、女性でも麦藁細工で日銭を稼げる為何とか家族の為にと幼い頃から学校も行かずに働いていた。
それでも日々食う食事を賄うのがやっとであったのだが、基本的に食事は男兄弟が食らい尽くす為、育ち盛りの私は常に空腹であった。
しかし兄達男手が無いとどうにもならない事も理解している為、それを羨ましいと思う事はすれど口には出さなかった。
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