第257話 たかが生の魚が怖いんですの?

「魚、生なのだが、本当にこれで完成なのか?」


恐る恐ると聞いてくるレオはなんだか新鮮で、普段のレオとのギャップにより思わずキュンとときめきそうになるものの、レオ故にときめく事は無い。


もしときめくとすれば、今日が初対面でゲームの知識も何も無い状況でしか、レオにときめくなどあり得ない。


そんな話はさて置き、わたくしは見下した様な笑みを浮かべてレオへ言葉を返す。


「まさか、将来帝国を守る帝国騎士団へ入団せんとしているレオ様が、たかが生の魚が怖いんですの?」

「なっ!?こ、ここここ、怖い訳がないだろっ!!へんな言いがかりは止めろっ!!」


レオさん、余りにもチョロ過ぎましてよっ!所詮は脳筋という事ですわねっ!


決してレオが鯛を釣ってわたくしが鯛を釣れなかった腹いせでは御座いませんので悪しからず。


レオが最終的に鯛を三匹釣り上げ、わたくしはベラしか釣れなかったと言って怒るのは理不尽だとわたくしは理解しておりますもの───等とは思いませんわっ!!


腹いせに決まっておりますわっ!!さぁ、その情けない表情を皆様に見せて差し上げなさいっ!!オーホホホホッ!!


「あら、では一番最初に食べて感想を聞かせて頂きたいですわね」

「良いだろうっ!食って感想を言ってやろうじゃねぇかっ!!こんな物火を通しているか、生かの違いで普段食べている魚と同じではないかっ!………っ」

「ほら、ほらほら、どうしたんですの?スプーンが止まってましてよ」

「えぇいっ!ウゼェっ!鬱陶しいっ!食えば良いんだろっ!?食えばっ!?」


そしてレオはまるで清水寺から飛び降りるかの様な表情で海鮮丼を口へいれると数秒間咀嚼しゆっくりと味わうように飲み込み、深く長いめ息を吐く。


「………ウメェ…っ!おいっ!これ美味いぞノアっ!」


そしてレオが海鮮丼の美味さを伝えようとノア様様の方へ振り返った先には、皇族故に洗礼された所作で海鮮丼を美しく、かつスマート食べているノア様がそこにいた


「そんなの当たり前だろう。なんて言ったてフランの手作りだからな。例え不味くとも、腹を下したとしても、フランが作ったものであればその時点最高に美味いに決まっている。そしてやはり、この料理は最高に美味いではないか」

「くっ、今回ばかりはフランを信用出来なかった俺の負けだ………っ!」


ノア様はそれが世界の常識であるかの如くレオを説き伏せ、レオは自身の負けを認める。


そして、その一連の流れを見たわたくしは───こ、これは一周回ってわたくしを馬鹿にしている………とかではないですわよね?───と思わず思ってしまう。

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