第152話 最年長でありメイド長だ

「この銃という武器は帝国の元奴隷商人であるジュレミアが新たに経営しております武器屋にて販売されているのですが、その武器屋独自の技術により、どう言う理屈か分かりませんが手続きした本人又は団体にしか使えない様になっております。 この様に」


 そう、ジュレミアが世界を手に入れたと言えるもう一つの理由、それはこの銃という武器の使用許可不可の権限は全てジュレミアの意思一つで銃の使用を許可にも不可にも出来てしまうという事である。


 この事実に目の前の馬鹿は知らないし、知ろうともしない。


 そう、これから起こるであろう未来もである。


 初老の男性が銃を教皇に見せ、そして渡した時点で俺は察っする事が出来たのだがこの教皇にはそれを察する事が出来なかったみたいである。


 自分としてはもう数年は先の話であるとは思っていたのだが、確かにこの銃という武器が出た以上それもまた致し方無しと判断したのであろうし、俺もまた今から起こるであろうことは賛成では無いが反対でも無いと言った所である。


 詰まる所ジュレミアのせいでどの判断が正しいのか俺の頭では判別出来ないという事である。


 そしてこういう時は多数決に限るのだが、初老の男性を止める者が今なお現れないという事はそう言う事なのであろう。


 そして初老の男性は銃口を教皇のこめかみへ狙いを定め、そして乾いた破裂音が響き渡るのであった。





 メイド長である私は見てはいけないものを見てしまったと思わず椿で出来た垣根に身を隠してしまった。


 その判断が失敗であったと思った時は既に遅し。


 フランお嬢様が、私が隠れている垣根の近くで布のシートを広げてティータイムを奴隷達と始めたからである。


 ちなみにメイド長という肩書きこそあるものの私の年齢はまだ二十代(今年から切り捨て)だ。その理由はメイド長だろうと何だろうとドミナリア家の者に気に入らないと思われれば問答無用で首になる。上も下もコロコロと首になり気がつけば私がいつに間にか最年長でありメイド長だ。


 けしていい歳して経験も豊富だからメイド長なのではないという事は理解して頂きたい。


 しかしながら、そこはまさにこのドミナリア家の異常性を感じ取る事が出来るであろう。


「こ、これでは出るに出られませんね」


 故に私はここから出るに出られなくなってしまった。


 今ここでフランお嬢様に見つかれば何をされるか分かったものではない。


 それこそアンナの様に奴隷へと落とされるかもしれないし、職を失うかもしれないのである。


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