第146話 拗ねた子供をあやすかのように
だから俺は素直にフランへ問いかける。
それは、以前の俺ではプライドが邪魔して出来なかった事であるが、今知ることのできる、知らなければならない事をたかがプライド一つで知り得た事を知る機会を失うと言うのは余りにも愚かであると言えるし、同時に過去の俺は愚かでもあった。
「人間の気持ちや価値観などその時の感情や体験、様々な要因で簡単に変わってしまうという事ですわ。 即ちそれはわたくしにとって信頼できないと同義でしてよ」
「俺のこのお前の力になりたいと言う気持ちは変わらないとお前に誓ってもか?」
今確かに抱いているこの気持ちは、フランの助けになりたいというこの思いは嘘偽りではないと神に誓える。
「そうですわね、以前のレオ様でしたらわたくしがドミナリア家、又は女性ってだけで見下していたのだけれども最近は価値観や考え方がお変わりになられたのかその様な態度は少なくなっているとわたくしは思います。 この様につい最近価値観や考え方が変わり始めたレオ様の言葉を一体どれほど信用して良いのでしょうか? しかし先程も申した通りそれが人間というものですわ。その件に関しましては自分の価値観を変えるには難しい年頃にも関わらずレオも様々な経験をして成長している証でもあるので素直に尊敬出来る箇所であるとわたくしは思っております。 しかしながらだからこそわたくしは側に奴隷を置いているのですわ」
しかしフランはその思いでは足りないと、人間は変わる生き物であると語る。
故に今は信用できても未来は分からないと。
そしてそのフランの言葉を聞き俺は言い返す事が出来なかった。
むしろフランのその言葉に納得してしまう。
少し前までの俺は、その考えが自分本位の自己中心的な考えであり男尊女卑的な考えであったという事に気付かず、それが当たり前であると何も疑わず、疑おうともしなかったし、むしろ俺の考えこそが絶対的に正しいとさえ思っていたのである。
しかしここ数か月で過去の自分が思っていた『絶対的に正しい』という価値観はものの見事に打ち砕かれ、今ではむしろその考えとは真逆に近い考えをもって行動している俺がいる。
その事実こそがフランのいう言葉そのものでありまさに生き証人ではないか。
そう考えた時、俺は果たしてフランの事を助ける資格が無いのではないのか?というある種の不安を抱いてしまう。
そんな事を思っているとフランにより頭を急に、まるで拗ねた子供をあやすかのように撫でられてしまう。
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