第108話 閑話─秘密結社の社歌─
───閑話───
【注意】
本編の続きではありません。
ここジュレミア邸には様々な高級家具や美術品や骨董品などがあり、それらがそこかしこに飾られていいるところを見るとさすが金持ちと言ったところであろう。
そのお金持ちの邸宅である。
その部屋数も多く、また一部屋一部屋広いのだからいかに金持ちであるか、またいかに贅沢な生活をしていたのかが伺えて来る。
そしてこの広い邸宅をメイドを雇うのではなく全て奴隷に無給にてやらせていたのだから出すところには出すが出さない所には出さないと言った典型的な成金であったことも何となく想像がつくというものである。
そんな大層ごりっぱなジュレミア邸であるからそれは当然のようにあり、この部屋のインテリアとしてその存在感を放っていた。
「まぁ、ありますわよね………ピアノ」
前世のピアノとほとんど変わらないそのフォルムに懐かしさを覚えると共にピアノを演奏したいという欲求も生まれてくる。
姉たるもの妹が産まれ物心がついた頃にはア〇パンマンの数ある曲を弾けるようになり、幼稚園から小学校低学年になるとプ〇キュアやセ〇ラームーンなどの曲を覚え、中学、高校にもなるとはやりのアニメやゲームの曲を弾けるようになって当たり前だとわたくしは思っている。
それは、その曲を弾くだけで妹は大喜びするものだからわたくしもついつい夜遅くまで、電子ピアノではあるものの親に怒られるまで弾いていたものである。
そんな懐かしい思い出に浸りながらわたくしはピアノに備え付けられている椅子にすわると、軽快なリズムを奏でながら歌い始める。
「踏んじゃ、踏んじゃ、踏んじゃったーっ──────困ってしまってわんわんわわん、わんわんわわんっ──────チョッキンチョッキンチョッキンなーっ──────とまっているよ竿の先ーっ──────バケツに穴が空いちゃったっ」
もう、手慣らしもかねて童謡などを弾きながら歌いまくっていたのだが、ここで辞めておけばと後でわたくしは後悔する羽目になるのだがテンションも上がってきて感覚も取り戻してきていた今のわたくしは部屋の扉が少し開いており、その扉の後ろには沢山の奴隷たちがわたくしの演奏と歌を聴いているとは思いもよらなかった。
そして奏でるは今までの童謡然とした曲調ではなく心躍るようなポップなメロディーである。
そしてわたくしは前世では年代ドンピシャな為このメロディーを聴いただけでテンションは爆上がりで、そのテンションと勢いのまま歌い始める。
「引き裂いたー闇が吠えー震える帝都にーっ──────悪を蹴散らして正義をしめすのだーっ──────唸れ衝撃の帝国の黒バラーっ!!」
それはもう、一か所をノリで黒バラに変えて歌いきってやった。
それはもうセリフまで全て完璧にである。
さすがゲームのキャラクターだけあって無駄にスペックの高い歌声で、感情を込めに込めて歌ったのである。
弾き終えた後もわたくしの心は興奮しきっており、さぁ次は何とかゲリオンの何とかのルフランでもこのまま弾いてやろうかしらっ!?と勢いそのままに次の曲を弾こうとしたその時、扉が『どぱぁっん!!』という音と共に勢いよく開き奴隷たちが一斉になだれ込んでくるではないか。
あのわたくしの歌、しかもアニソンを熱唱しているのを聴かれて恥ずかしさのあまり今すぐこの場所から逃げ出したくなるのをぐっとこらえる。
これは一体何の拷問なのだろうか?
「「「ローズお嬢様っ!!先ほどの曲を私達にお教えいただけないでしょうかっ!?」」」
開いた口が塞がらないとはこの事か。
さらに言えば奴隷娘達のこのキラキラとした瞳。
そんな瞳を向けられてしまってはさすがに嫌だとは言えず、あれよあれよと奴隷たちが覚えていき、気が付けば秘密結社の社歌とまでなり、新人が出来ては教えるという流れまで出来てしまい、わたくし一人ではどうする事も出来ないところまでになってしまうのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます