第43話 全て計算通りなのである

 あの時の、目をこれでもかと輝かしていたウルの御主人様像を壊さない為にも。


 そう思いながらコールドウェル邸をウロウロと不規則に移動する。


 ちなみにただ移動するだけではウルに、わたくしが迷子になった事がバレてしまうかもしれないのでそこはかとなく適当に解術の魔術を要所要所に怪しい箇所へ放って行く。


 迷子じゃないですよー。 ほら、わたくし解術してるのですよー。


「あの、フランお嬢様?」

「大丈夫よウル。 このままついて来なさい」

「はいっ!!」


 痛い。


 その疑う事を知らない眩い瞳に見つめられて胸が痛む。


 しかし、一カ月前まではまさかここまで心を開いてくれるなどとは思いもしなかった。


 だからこそわたくしに向けて来るその瞳を護りたい。


 そんなこんなで十一箇所目を適当に解術魔術を放った時、コールドウェル邸全体の雰囲気が手に取るように変わった気がした。


 それは空気なのか視覚なのか魔力的な何かなのか分からないのだが、明らかに何かを解術出来たのは間違いない。


 分からないのだがウルの瞳が更に輝き出した事だけは分かった。


「さぁウル、この突然出てきたこれ見よがしな扉はなんなのでしょうね……あれ?、 開かない……小癪なっ! 引いて駄目なら………全力で押すのみですわぁっ!!」


 何かが爆破したような轟音と共に扉が開いた。


 このわたくしに手間をかけさせる猪口才な扉など、わたくしの頭脳を持ってすれば敵ではありませんわ。


 開かないからと言って破壊するのは脳筋のする事でありスマートではないとわたくしは思う。


 そして扉の向こうには本日の役者が揃い踏みである。


 そう、これは全て計算通りなのである。


 あぁ、ウルの視線が何故だかわたくしの罪悪感を刺激する。


 しかし、役者が揃っているのだ。


 更にカッコいいわたくしを見せて差し上げましょう。


 そしてわたくしはゆっくりと渦中の中へと歩いて行く。


「諦めなさい。 既にこの件は然るべき場所へ通報させて頂いておりますわ」

「えっと………フラン様?」

「いいえ、違いますわ。 全くの別人ですわ。 きっと長い時間拘束されて疲れてらっしゃるのでしょう」

「いやでも、金髪のドリル──」

「違います。 他人の空似ですわ」


 ふぅ……危なかった。


 勘のいいガキは嫌いだよ、全く。


 しかしさすがわたくしの完璧な変装である。


一 時はバレたかとも思ったがどうやら騙しきれたみたいである。


「ふむ、お前が誰か知らないがたった二人で何が出来る?残念だがここには我がコールドウェルの護衛であり冒険者ランクSSSでもある剛拳のゴウラムと剛剣のドウラムがいる。 生きて帰れると思うなよ。 殺れ、二人とも」

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